本イベントでは、デサイロが支援する4人の研究者が、「いま私たちはどんな時代を生きているのか」という問いのもとに研究テーマをそれぞれ設定。そのテーマに基づき、計11組のアーティストが作品を制作する。ライブパフォーマンスや体験型のインスタレーションなど、いわゆる学術的な「発表」に収まらない形式で、研究とアートの融合を体験できるのも特徴だ。
実は、主催するデサイロ代表理事の岡田弘太郎、研究者の和田夏実、コラボレーターであるメディアアーティスト・ゲーム開発者の木原共は、Forbes JAPAN 30 UNDER 30にも選出されている。今回はForbes JAPANと縁のある3人にオンラインで集まってもらい、本イベント・作品の制作の過程や見どころを聞いた。
*記事末尾にForbes JAPAN読者限定、招待チケットのご案内があります。
研究とアートが、互いにインスピレーションを与えあう
──まずは「DE-SILO EXPERIMENT 2024」の概要について、岡田さんから簡単にご説明いただけますか。岡田:デサイロは、人文・社会科学分野の研究者を伴走支援するアカデミック・インキュベーターとして、2022年10月に発足しました。第一期の研究者伴走支援プログラムでは、人類学者の磯野真穂さん、哲学者の柳澤田実さん、社会学者の山田陽子さん、メディア研究者の和田夏実さんの4人の研究者をサポートしています。
その研究を通して生まれるさまざまな“知”を、どのような形で社会に届けるのが良いか。考えるなかで出てきたのが、「研究とアートの融合による体験型イベント」というアイデアでした。
左から磯野真穂さん、柳澤田実さん、山田陽子さん、和田夏実さん。それぞれの研究テーマは「21世紀の理想の身体」、「『私たち性 we-ness』の不在とその希求」、「ポスト・ヒューマン時代の感情資本」、「『生きているという実感』が灯る瞬間の探求」
着想源になったのは、環境哲学者のティモシー・モートンによる実践です。モートンは、ビョークの楽曲「Hyperballad」からインスパイアされて、人間には巨大すぎて不可知な存在を意味する「ハイパーオブジェクト」という概念を名付けています。
一方で、アーティストのオラファー・エリアソンはモートンの思想に影響を受けて作品を作っていたりもします。アートが研究にインスピレーションを与えることもあれば、その逆もある。学問と社会の多様な接点をつくる上でこのあり方は参考になるし、同じようなことを実践できないかなと考えました。