堀 義人 日本を変える「100の行動」



「批判より提案を」「思想から行動へ」「リーダーとしての自覚を醸成する」─。
政界、財界、学界、文化人などが、毎年冬に集まる会合がある。日本版ダボス会議と呼ばれる「G1サミット」だ。討論に終わらず、変革のために「100の行動」を始めるという。

「G1サミット」をご存じだろうか。2009年、冬景色の福島県アルツ磐梯で1回目が開かれて以来、毎年、地方のリゾート施設で開催されているが、一般メディアではほとんど報じられていないため、国民に広く認識されているわけではない。しかし、「日本版ダボス会議」と呼ばれている通り、参加者の顔ぶれからいったい何が話されているのか、興味をもたない者はいないだろう。
iPS細胞の山中伸弥はノーベル賞を受賞する前からG1のボードメンバーであり、参加者には、安倍晋三、現役閣僚、与野党の政治家、霞が関の官僚、民間からは若手起業家に、名だたる企業の経営者たち、学者など大物から新進気鋭までがそろう。文化人やオリンピック選手もいて、第一線で活動中の人ばかりだ。(中略)

 G1の中から「100の行動」というプロジェクトが動きだしており、日本の100の課題を見つけて、解決していくという。
まるで政府主催のような大がかりな取り組みだが、民間団体の取り組みに官僚を含めて政権内の人間までもが参加するのはどうしてだろうか。その理由は、G1サミットが生まれたプロセスに関係あるだろう。
安倍内閣で官房副長官を務める世耕弘成は、辰巳と同じく創設時からのボードメンバーで、「100の行動」に参加している。政策提言を行う民間シンクタンクや社会変革を目指す民間団体と何が違うのか。世耕が言う。
「立派な提言や答案を書くのは簡単なんです。問題は実行すること。実現させなければ意味がない。『100の行動』に期待しているのは、これまで政権内で仕事をした人たちが参画している点です。提言を実行しようとすると、不利益を被る人たちがいるし、反発する人もいる。政治家はどこに障壁があるかを知っています。『そんなのは政治家が突破してよ』と、政治家だけに期待されても現実には合意形成は難しく、簡単にはいかないのです。だから、私は問いかけています。『政治の力だけではなく、民間はどう動くんですか。世論を動かすには、政治の力だけでなく、民間の皆さんの力も必要なんです』と」
20年前だったら、こんな仕掛けをつくる必要はなかっただろう。政治は、プロレスのように役割が決まっていて、批判する人と批判される人が舞台の上で役割を演じる一方、社会システムはうまく動き続けていた。
しかし、経済が右肩上がりではなくなると、合意形成は困難になり、停滞の時代になった。すると、こんな世の中に誰がしたとばかりの「犯人探し」に世間は懸命になる。(中略)

「犯人探し」が一巡したとき、「批判よりも提案を」と呼びかけたのが、G1の創設者、堀義人だった。
賛同する人が多いのは時代の変化だろう。みな、イナゴの大群に辟易し、いい加減に停滞から脱したかったのだ。提案を呼びかける堀は、「100の行動」をこう言う。

「これは静かなる革命です」
(以下略、)

次号から「100の行動」を連載します。
参加者たちが語る戦略にご期待ください。

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