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2024.03.13 17:30

Apple Vision Proをディスるザッカーバーグ、見識を疑われる

安井克至

過去に目を向けて未来を予言する

「ARとVRはまだ比較的新しいテクノロジーだ。両者の未来を予言する方法の1つが、コンピュータの歴史を振り返ってみることだ。1970年代と80年代にワードプロセッサーという製品があった。キーボードと(多くは)スクリーンとプリンターを搭載した、単一目的に特化したデバイスだ。またユーザーは、多目的なコンピュータ、たとえば初期のMacintosh(現Mac)を買って文書作成を行うこともできた。

1980年代初めには、ワードプロセッサーが手頃な価格で買えるようになった。一方、初期のデスクトップコンピュータはまだどこかぎこちなかった。専用機はよく売れた(訳者注:これは米国の話だが日本でも状況は似ていた)。理論的に、ワードプロセッサーのメーカーは、スプレッドシートなどの機能を追加していくことが可能であり、現在のパソコンへと進化していた可能性もあったがそうはならなかった。代わりに、単機能の専用機は歴史的遺物になった。

アナロジーが伝わっていれば幸いだ。Vision Proは初代のMacintoshであり、Questは当時のワードプロセッサーだ。もし歴史が繰り返されるなら、VRに特化したヘッドセットは忘れられ、ARに焦点を当てた機器が、未来のコンピュータの標準になるだろう」

ハーディによる記事の全体的なテーマは、Quest 3はVRに焦点を絞り、Vision ProはARに焦点をしぼっており、最終的に未来を支配するテクノロジーはARであるというものだ。

しかし、ザッカーバーグのコメントで注目すべきなのは、多くのアナリストやメディアが、彼のVision Pro観の信憑性を疑っていることだ。ザッカーバーグがメタ製品を擁護する必要性はわかるが、Questがより優れた製品であるという彼の発言は妄想的だと誰もが指摘しており、それどころかこの話題に関する彼の信用度も損なっている。

私は数十年間VRを研究し、その目的と機能を理解しているアナリストの1人として、VRは優れたゲーミングシステムであり、企業がトレーニングやさまざまなエンターテインメントに利用できるものだと考えている。その一方で、私はごく早い時期から、ARの方が大衆市場にアピールすると断定していた。実生活の体験をリアルタイムに支援する情報とコンテンツを提供する点では特にそうだ。

これからも、より伝統的なVR体験を求める人たちにとってQuest 3への関心と需要は続くだろうと私は予測している。しかし、Apple Vision Proの評価と利用が進むにつれ、Quest 3がVision Proの能力を超えていないことはいっそう明白になるだろう。

情報開示:筆者が所属するCreative Strategiesの調査レポートは、アップルをはじめ世界の数多くのハイテク企業が購読している。

forbes.com 原文

翻訳=高橋信夫

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