AIで過去の問題が再燃する可能性
ロンドンを拠点とするAIの安全性に関するスタートアップConjecture(コンジェクチャー)のCEOのコナー・リーヒーは、オープンなアプローチをとるメタが、主要なAI企業の中で「最も無責任」だと考えている。「核兵器の設計をオープンソースにする必要があるのだろうか?」と彼は問いかける。ルカンは、そのような批判を一蹴する。「現状のAIは、まだ極めて原始的なものなのです。そのためオープンソースに付随するリスクよりも、メリットの方がはるかに大きいと考えます」と彼は主張する。
一方、グーグルのディープマインドは、コードや研究内容を一切公開していない。ルカンはディープマインドの創設者でCEOのデミス・ハサビスとXで対立し、AI規制を求めるハサビスが「恐怖を煽っている」と非難した。ハサビスはルカンの発言に反発し「システムが危険なものになる前に企業がリスクを管理する必要がある」と主張した。
フォーブスがディープマインドのアプローチについての見方を質問すると、ルカンはこう答えた。「グーグルがディープマインドをより緊密に社内に統合するにつれ、ディープマインドはよりクローズドなアプローチを強化した。私の見方では、この姿勢はAI業界全体の進化を遅らせるものです。ですから、私は彼らの動きにあまり満足していません」
FAIRがオープンソースを説く一方で、メタは自分たちのビジネス上の利益しか考えておらず「意図的にグーグルやOpenAIを狙い撃ちしている」と主張する批評家もいる。その意見について尋ねられたルカンは「それは違います」ときっぱりと答えた。
「私たちのモチベーションは、AIは進歩を遂げる必要があるという思いにあります。そして、研究コミュニティ全体がそれに貢献する必要があるのです」と彼は語った。「コンプレックスを持っているかもしれない他の企業とは異なり、私たちは良いアイデアを独占しているとは思っていません」
しかし、ディープマインドの広報担当者のアマンダ・カールは、大規模言語モデルを支える技術であるTransformer(トランスフォーマー)や機械学習プラットフォームのTensorFlow(テンサーフロー)などのインフラや開発者ツールが、オープンソースのコミュニティに貢献していると主張している。「私たちのオープンソースの歴史は、それを物語っています」とカールは述べている。
一方で、FAIRに以前勤務していたあるフェイスブックの元社員は、メタにとってAIの進化は同社の旧来の問題を浮き彫りにする可能性があると述べている。「メタにとってのAIは、安全性やコンテンツの監視、ウェルビーイングにまつわる同じ課題や懸念に新たな額縁をつけたに過ぎない」と、匿名で取材に応じたその人物はフォーブスに語った。「それらの問題はすべて、AIによって増幅され続けるだろう」と彼は述べている。
そんな中、メタの社内でのAIの役割は拡大し続けており、その盛り上がりは再びザッカーバーグの注目を集めるようになった。「マーク(・ザッカーバーグ)は今から10年前のFAIRの創設に深く関わった後に、その後の数年間はこの部門から離れていた。そして今、彼は再び関与を深めている」とFAIRのピノーは指摘した。
(forbes.com 原文)