米国でも最近、複数の「ホットスポット(感染中心地)」が発生し、公衆衛生当局が警鐘を鳴らしている。米疾病対策センター(CDC)によると、米国内では年初から3月7日までに、カリフォルニア州やハワイ州、ニューヨーク市など17の州・市で計45人のはしか患者が報告されている。このペースが続けば通年では、直近で最も流行した2019年以降で最多を記録する見通しだ。
はしかがこれほど懸念される理由
数十年前に効果的なワクチンが開発されてから、多くの先進国ははしかの抑え込みに成功している。そのため、はしかは発疹や鼻水、発熱を引き起こすだけの良性の病気と思われているかもしれない。だが、残念ながらそうではない。はしかは、子どもがかかると1000人あたり1~3人の割合で死亡したり脳に損傷を負ったりする。また、妊娠中の女性のほか、臓器移植を受けた人、がん患者、HIV(ヒト免疫不全ウイルス)感染者、免疫抑制剤を必要とするその他の病気の患者など、免疫機能の低下した人も、深刻な結果につながるおそれがある。
栄養状態の悪い貧困地域ではとくに5歳未満の乳幼児は重症の下痢などで死亡することもある。世界全体ではいまも毎年、10万人以上の子どもがはしかで命を落としている。
はしか「復活」の原因は?
はしか患者の増加にはいくつかの要因がある。まず、そもそもはしかウイルスはウイルスのなかで最も感染力が強いことがある。感染者1人が何人にうつすかを示す「基本再生産数(R0)」は、はしかでは12~18に達する。これだけ感染が広がりやすいと、状況がすぐに制御不能に陥りかねないのは容易に想像できるだろう。2つ目は、はしかは感染力が非常に強いために、感染拡大を制御するには集団免疫率もきわめて高い水準、最低でも95%に保つ必要があることだ。免疫は自然感染かワクチン接種を通じて獲得される。