3つ目は、新型コロナウイルス禍後の国外旅行者の記録的な増加だ。世界には国民にはしかワクチンを接種するリソースのない国もあり、コロナ禍の間、定期的なはしかワクチン接種を中断した国も少なくない。そのため、はしかが比較的発生しやすい国を訪れた人が現地でウイルスに感染し、それを自国に持ち帰り、ほか人たちに広げる機会が生じている。
4つ目は、コロナ禍が終わって子どもが学校や保育園などに戻っていることだ。どんなウイルスも、永続するために人間の行動を利用する。はしかウイルスが増殖するのに、混雑した学校ほど、感染しやすい新たな宿主(しゅくしゅ)を見つけるうえで好都合な場所はない。教室内や廊下、送り迎えのバス内などで、子ども同士の接触が頻繁に起こっているからだ。
はしかはどのように広がるのか
はしかはせきやくしゃみなど呼吸器飛沫によって広がる。ウイルスに曝露してから、約10〜12日後に前駆症状として高熱が出て、約14日後に発疹が現れる。発疹が出る4日前から4日後までの間、ほかの人にウイルスを感染させる可能性がある。患者は絶えずせきをしたり鼻水を垂らしたりしているので、これらを通じて広がりやすい。公衆衛生対策が長年をかけて発展してきたのには単純な理由がある。それが効果を発揮するからだ。ただ、公衆衛生対策が機能するには、リーダーシップと一貫したメッセージ、そして対策への国民自身の参加が必要になる。