今年はAIだけでなく、未来予測をテーマにしたセッションが目立った。企業や団体がフューチャリスト(未来学者、または未来を予測する人)の支援を受けることは、米国においてもはや珍しいことではないようだ。本稿では、筆者がSXSWに参加した理由、そして未来予測がビジネスやマーケティングで重要になっている背景について述べたい。
生成AIは避けて通れない分野
30年を超える歴史あるイベントに、筆者は今回初めて参加した。基本的にカンファレンス会場に滞在し、AIや未来予測、トレンド、マーケティングのセッションを聴講している。本稿執筆時点で、開幕して3日目ではあるが、今年のセッションは明らかに生成AIが中心だ。未来予測やトレンドのセッションでも、時間を割いて生成AIの活用方法や生成AIが世の中にもたらす影響について解説される。それだけ発達スピードが著しいということだろう。
昨年11月に筆者が参加した、スタートアップとテクノロジーのカンファレンス「ウェブサミット」(ポルトガル・リスボン)でも、出展企業の何割かはオープンAIのAPIを活用していると現地で聞いた。ビジネスが成功するかどうかは別として、もはやスタートアップやテクノロジーといった業界にとって、生成AI(もしくはAI)は避けて通れない分野といえよう。
知識ではなく「考え方」を得るために参加
「何がきっかけでSXSWに参加したのか」「参加目的は何か」。オースティンに来てからというもの、本当によく尋ねられる。もちろん、筆者も相手に参加のきっかけや目的を尋ねる。少なくとも筆者は以下の理由でこうした質問をしている。第一に、様々な「考え方」に触れるためだ。AIが私たちに及ぼす影響があまりにも大きいことに皆気づき始め、また、社会・経済の先行きは見通せない。答えのない時代に突入し、細かい知識や具体的な手法自体の価値は低下。結果、相対的に「どうやって考えるか」(How to think)が重要となった。ビジネスやマーケティングの思想にもつながる話である。参加のきっかけや目的を尋ねることで、相手がどのような方法で考えているのか、どんなビジネスの思想を持っているのかが見える。