「願い」の伝播と着火
南は昔から、世代の異なる経営者と、主体的に会うようにしてきた。「ルーティンを壊すためのルーティン」の一環だという。日本経済新聞の「私の履歴書」で、気になったレジェンド級の経営者には、会いにいく。アスリートやミュージシャンなど、異分野の挑戦者も同様だ。「変わり続けるために学び続ける。人から新しいことを学ぶことで、自らの好奇心に火がついていく。僕の生きる原動力は、学びであり、好奇心である」
野呂には南から受け取ったメッセージのなかで、特に大切にしているものがある。
「昼も夜も忘れ、最速で結果を出すことにこだわってきたが、南さんから『今をまず大切にする。プロセス自体を楽しむことも重要』と教えられた。会社や経営者の仲間と一緒に過ごす時間を大切にすることが自分の豊かさに繋がっている」
価値あることを正しくやり抜く仲間はいるか。事業づくりは、仲間づくり。それは南のリーダーとしての信条である。「最高の仲間と歴史をつくろう、と。道草をくったり、遠回りもしたが、僕は仲間とのジャーニーを心の底から楽しんできた。みんなと見てきた風景が会社や人生そのものだ」。
最後に南へ、リーダーシップの本質を問うと、シンプルな答えが返ってきた。
「願いだと思う。どうありたいかの願いが伝播して、みんなでその願いを自分たちのものにしていこうとする。その過程でみんなに生まれるさまざまな思いや行動こそが、リーダーシップの本質であり、僕がみんなと歩んできた道である」
みなみ・そういちろう◎ビジョナル代表取締役社長。1976年生まれ。米タフツ大学卒業後、現モルガン・スタンレーMUFG証券などを経て、2004年から東北楽天ゴールデンイーグルス創立メンバーとして従事。09年ビズリーチ創業。20年2月より現職。
のろ・ゆうき◎燈Founder,CEO。1999年、神奈川県生まれ。東京大学工学部在学。東大・松尾研究所で企業提案・共同研究への従事、人材会社の起業を経て、2021年に燈を創業し、現職。『ForbesJAPAN』「30 UNDER 30 2022」受賞。