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2024.03.18

第8回 バフェット理論、ソロス理論の「違い」と「共通項」とは?

投資家としての私は、ジョージ・ソロスさんとウォーレン・バフェットさんという2人の伝説的な投資家から多大な影響を受けていますが、この2人の投資スタイルは、まったく正反対といえると思います。

 両者の違いは、特に変動し続ける市場経済に対して、投資家としてどうアプローチするか、という部分に現れます。

バフェットさんの「バリュー投資」

バフェットさんの場合、そもそも市場価格の変動に振り回されない投資を提唱、実践しています。

 その投資スタイルは「良い株を格安で購入し、長期保存する」という極めてシンプルなもので、一言いえば、投資した企業のオーナーになるということです。これを「バリュー投資」と言います。

 投資した企業が利益を上げ続ければ、オーナーである投資家にも自然と富が蓄積されるという考え方なので、その企業の株価がいくらになるかということにはあまり関心がないんですね。

 バフェットさんの関心は「その企業が利益を上げ続けることができるかどうか」にあり、そのため投資する時に彼はまず「ROE(自己資本利益率)」に着目します。ROEとは純利益を自己資本(純資産)で割った数字で、株主が投資した資本を元手にして、どれだけの利益を上げているかという指標になります。

 100億円の資本を使って10億円儲けるのと、50億円の資本を使って10億円儲けるのとでは、同じ10億円の儲けでも意味が異なります。後者のほうが「本当に儲けている企業」といえます。

 そして、その企業が今後も「儲け続ける」ことができるかどうかを見極めるために、その企業のブランド価値や経営陣などの企業固有の要因を徹底的に調査するのです。

ソロスさんの「再帰理論」投資

一方で、ソロスさんの市場経済に対するアプローチは、バフェットさんのバリュー投資の対極にあります。ソロスさんは市場の価格そのものに注目するからです。

 すべての価格は相対的であることを積極的に受け入れ、現在の価格が将来の価格を決定する重要な要素であると考える「再帰理論」(当連載第4回参照)に基づいた投資です。

 例えば二国間の通貨のように、本質的に実体価値を正確に予測することが不可能な投資対象に対して、それぞれの国の経済を相対的に比較し、将来起こるであろう信用創造や価値の変化に投資するわけです。いわば期待形成の変化に注目しているわけで、このアプローチは株や債券に対しても同様です。

 つまりソロスさんは、市場の人たちが現在の価格に対してどう思い、今後どう動くかということを体系的に予想した人、と言えます。ですからバフェットさんと違って個別企業のブランド価値や経営陣が何をしているかは、ソロスさんの投資においてはあまり意味がないわけです。

投資における「中庸」とは?

バフェットさんとソロスさん、どちらの投資戦略が正しい、ということはありません。結局のところ、この両者のまさに「中庸」のところに私なりの投資の型を作り上げてきたような気がします。

 投資における「中庸」というと、私にはもうひとつ思い浮かぶことがあります。

 皆さんは、投資において誰もが必ず乗り越えなければならない一番大きなチャレンジとは何だと思いますか? 

 私は、それは「欲」と「恐怖」に対峙できるかということだと思います。

 投資でリターンを得た人は誰もが、もっとリターンを上げたい、もっとベットしたいという「欲」に囚われます。逆に投資で損を出した人は、ものすごい「恐怖」に囚われて、委縮してしまう。いずれの状態も正常な判断をすることが難しくなってしまいます。

 投資家は、そういう根源的な感情をマネージするうえでも、「中庸」――どちらにも片寄らないで常に変わらないこと。過不足がなく調和がとれていること。また、そのさま(日本国語大辞典)――であることを心がけるべきだと思います。

バフェットとソロスに共通すること

面白いことに、市場に対して正反対のアプローチをとるバフェットさんとソロスさんですが、投資家として共通する点があります。

 それは自分なりのアプローチによって「ここに投資すべき」と結論づけたものに対しては、躊躇せずに大きな金額をベットする「ガッツ(勝負根性)」です。

 例えばバフェットさんが最初にコカ・コーラに投資した当時、彼の総運用額は約30億ドルぐらいでしたが、実にその約3分の1くらいの金額をコカ・コーラに投資しているんです。

 ソロスさんにしても、彼が最初に大きく儲けたのは、1985年のプラザ合意(ニューヨークのプラザホテルで開催された先進5カ国蔵相中央銀行総裁会議において、各国の協調介入によってドル高是正をはかることなどが合意された)後に円を買ったときなんですが、この時、彼は1000億円ほど先物で買っています。当時ソロスさんのファンドは100億~200億円の規模でしたから、いかに大きな勝負に出たかがわかると思います。

 もちろん「卵は別のバスケットに分けて入れる」ポートフォリオ理論も大事ですが、投資において圧倒的なリターンを得るためには、自分が最も投資価値が高いと判断したものに対して一極集中で投資することが最適であることは確かです。

 「中庸」の思考を心がけつつ、その結果、導き出された結論に対しては、しっかりと金額を張ってコミットすること――それが投資の極意、ということになるのかもしれません。

promoted by スパークス/text by Hidenori Ito/ illustration by Jun Takahashi

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