プラントハンター×リユースが生む未来の地球のための「新しい循環」

西畠清順|そら植物園代表取締役(写真左)嵜本晋輔|バリュエンス代表取締役(同右)

世界をまたにかけるプラントハンターとリユースの旗手が手を組み、事業創出に動き出した。「観葉植物は3年保てばいい」などと言われ、捨てる前提で売買が繰り返される花卉園芸業界に一石を投じるというのだ。

プンラントハンター、西畠清順が代表を務める「そら植物園」ではこれまで、「半分枯れてしまって美しくない」や「いただいたけれど保管ができない」といった植物を数多く引き取ってきた。

この状況を好転させるには、ひとりで取り組むよりもその道のプロと組んだほうがいい。植物×ベンチャーのアイデアを練るなかでこう考えた西畠に知人が紹介したのが、ブランド買取専門店「なんぼや」などで知られるバリュエンスグループCEOの嵜本晋輔だった。

バリュエンスは、ブランド品に加え、骨董品や美術品、不動産や車、ワインなど、世界中の実物資産を扱うリユース事業を展開する。嵜本は2023年の夏、植木をリサイクルする共同事業に向けて対話を始めたころのことをこう振り返った。

「植物の取り扱いこそなかったものの、希少性の高い盆栽や、そうした植物のある“庭じまい”の相談を受けた実績はありました。清順さんと組むことは、顧客にとっての選択肢を増やすこと、そして、私たちの仕入れ先を広げるチャンスにもなる。両社が得意とすることや、カバーしきれていない分野を補完し合うことでできることはたくさんあると確信しました」

日本には、高齢者を中心にタンス貯金が約数十兆円以上あるといわれているが、同様に数値化されていない財産は庭にも眠っている。植木のリサイクル事業は、こうした資産の価値づけや利活用になるという期待もある。また、利益率が低い植物の問屋という視点からも、高い利益率を見込むことができると西畠は言う。

「花屋やグリーンショップは、一般的に原価率を4割以下に設定していると言われています。例えば、仕入れ値が1万円であれば、販売価格は約3万円。リユースの植木であれば、仕入れという工程を省き、引き取り金額が売り上げにもなる。もちろん、傷んでいれば養生の期間や費用が発生しますが、仕入れてすぐ売れることもあるでしょう。あるいは時間がたって付加価値が生まれ、高価格になる可能性だってある。これまで誰も注目をしてこなかったビジネスモデルをかたちにするために、両社で対話を重ねています」

10年後、20年後を待たずに、今

世界各国が2050年までに温室効果ガスの排出実質ゼロにする、カーボンニュートラルを目指す今、ファッション業界にも属する自分たちができることは、啓蒙活動だと嵜本は語る。

「弊社は、高価なものが新品よりも安く手に入ることを打ち出して発展してきました。しかし今後は、新品ではなくリユース品を買うほうが地球のためになる、という購入時の心の豊かさにも価値を感じていただけるよう設計していきたいと思っています。弊社が展開するプレオウンド・ブランドショップ ALLU表参道店では、プライスタグにアイテムのリユースによる環境負荷削減貢献量を数値で記載しています。今回の共同事業では、全国130店舗以上、海外の拠点も含めて、顧客が植物と向き合う機会も提供できたらと思っています」
次ページ > 誰かが取り組まなければならない課題

文=守屋美佳 写真=山田大輔

この記事は 「Forbes JAPAN 2024年3月号」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

ForbesBrandVoice

人気記事