Forbes BrandVoice!! とは BrandVoiceは、企業や団体のコンテンツマーケティングを行うForbes JAPANの企画広告です。

2024.03.21

「未来を拓くイノベーションTOKYOプロジェクト」が支援! AIメディカルサービスの内視鏡AIが目指す、胃がんの見逃しゼロの未来

東京都が展開する「未来を拓くイノベーションTOKYOプロジェクト」は都内ベンチャー・中小企業等が、事業会社等とのオープンイノベーションにより事業化する製品等の開発、改良、実証実験及び販路開拓を行うために必要な経費の一部を東京都が補助するとともに、事業化に向けたハンズオン支援を行う事業だ。

同事業に2020年度に採択されたAIメディカルサービスは、内視鏡にAI技術を用いることにより、世界規模での”がん見逃しゼロ”の実現を目指している。代表取締役CEOの多田智裕に事業の歩みや世界展開について話を聞いた。


内視鏡AIが内視鏡検査中に体内の異変を検出

近年、AI(人工知能)技術の発展は著しく、あらゆる分野での活用が進められている。私たちの健康を支える医療業界もその例外ではない。世界の医療領域におけるAI活用市場は、2030年には29兆円規模*まで拡大するとの予想もある。
*2024年2月28日時点

ここ日本にも、AIと医療を掛け合わせた先端技術の研究開発に尽力する人物がいる。内視鏡指導医として長年の経験を持ちながら、AIメディカルサービスの代表取締役CEOを務める多田智裕だ。彼は内視鏡、すなわち「胃カメラ」や「大腸カメラ」にAI技術を用いることで、国内のみならず世界のがん患者の命を救うという重大なミッションに立ち向かっている。

「AIは人間の知能を拡張する存在です。人間は長い歴史の中で、知能を駆使して目まぐるしい発展を遂げてきました。その知能がAIによって強化されるのですから、社会はよい方向に進むに違いありません。今後は医療分野もAIとともに明るい未来を築いていくでしょう」

AIメディカルサービスが開発したのは、内視鏡画像診断支援ソフトウェア「gastroAI™ model-G」。世界トップクラスの医療機関から提供された膨大な胃の病変(病気による生体の変化)等の画像データをAIが学習し、内視鏡で撮影された消化管内の映像を解析することで医師の診断をサポートする仕組みである。最大の特長は、内視鏡検査中に病変の候補を検出できる点。胃がんの疑いがある病変をカメラが捉えると、AIが解析を開始してその結果をモニターに表示するのだ。

AIメディカルサービスは確かな技術力と将来的な可能性が評価され、ファンドからの投資や補助金など累計145億円の資金調達に成功。「未来を拓くイノベーションTOKYOプロジェクト」の採択により、最大で2億円程度の支援を受けられるようになった。創業以降、研究開発を重ねてきた「gastroAI-model G」は、2023年12月に製造販売承認を取得し、2024年3月より販売がスタートした。今後は、「未来を拓くイノベーションTOKYOプロジェクト」の成果を組み込み、更なるブラッシュアップを図る予定だ。

医療現場で感じた危機感が開発の原動力に

内視鏡AI技術のデモの様子内視鏡AI技術のデモの様子

医師として着実にキャリアを歩んできた多田が、なぜAIメディカルサービスを設立するに至ったのか。その背景には、医療現場で実際に経験してきた内視鏡検査に対する危機感があった。

そもそも内視鏡は、日本が世界をリードする先進の医療分野のひとつである。人体にカメラを挿入して内部の異常を発見するというそのシンプルかつ革新的な技術は、日本をはじめとする各国の医師やエンジニアが試行錯誤を繰り返し、現在まで進化を続けてきた。

こうした努力の賜物として、内視鏡機器自体や医師の技術力、内視鏡医療における手法は日々発展し、以前よりも安全かつ苦痛も少なく検査を受けられるようになった。しかし、診断における課題は山積みであると現場を知る多田は感じていた。

「内視鏡の技術がどれだけ進化しても、それを目視で診断するのは医師の仕事です。しかし、医師といっても人間。診断経験の差に応じて目視の精度にばらつきが生じることもある。医師によっては2割以上の病変を見落としてしまうというのが現実です。また、自治体が主導する胃がん検診においては、内視鏡検査によって撮影されたデータは数人の内視鏡専門医が集まってダブルチェックを行っていますが、これが現場の専門医にとって大きな負担になっているのです。医師はクリニックの診療時間後に、何千枚もの画像チェックをしなければならないという状況にあり、現場は疲弊し精度も落ちるという悪循環をいち早く打開しなくてはならないと感じていました」

こうした内視鏡検査の課題をAI技術で解決したい。使命感に突き動かされた多田は、内視鏡とAIを結びつけた研究に着手した。

「2016年、国内におけるAI研究の第一人者である東京大学・松尾豊教授の講演会に参加した際、AIの画像認識能力が人間を上回り始めたという話を聞きました。それならば内視鏡にも応用できるはずだとすぐに考えついたんです。松尾教授の当時の話では前例のない研究とのことだったので、自分でやってみようと思いました」

「アイデア自体は誰でも思いつくものだと思いますよ」と語る多田。AIを活用した内視鏡診断ソフトについても、間違いなく成功するという確信があった。ところが、すぐさまAIの研究開発に取り掛かることができたわけではなかった。

「弊社が求める水準の内視鏡AIを開発するためには、既存の汎用開発ツールでは不十分で、専用のデータ収集ソフトウェアやアノテーションソフトウェアが必要であると分かり、当初は手探りの状態で進めなくてはなりませんでした。メインのAIアプリケーションを開発する前段階で必要となるツールも自分たちでゼロからつくる必要があったのです」

多田が最初に取り組んだのは、医療機関から提供された内視鏡画像を匿名化するソフトウェアの開発だった。患者の内視鏡画像そのものが機微な個人情報であり、医療機関において慎重な取り扱いが求められる。そのため、データの匿名化、つまり個人を特定できない状態にしなければ、提供することも収集することも叶わないのである。AIの開発以前に、約3カ月間を匿名化のためのシステム開発に費やしたと多田は振り返る。

その後、膨大な数の画像を精査してデータベースを構築し、ディープラーニング(深層学習)を活用した研究を進め、2017年には胃がんの原因とされるピロリ菌感染の有無を鑑別するAIを世界で初めて開発。同年、胃がんを検出するAIについても完成のめどが立ったタイミングで、製品化を円滑に進めるためAIメディカルサービスを創業した。しかし、その先に待ち受けていたのは社会実装への高いハードルだった。

「当時は、AIを用いた医療機器を法規制に基づいて審査するプロセスが全く整っていませんでした。医療機器なのかどうかという分類すらふわふわしている段階。横断歩道も信号もなく、もっといえば道路もない中で歩いているような不安がありましたね」

技術を評価する基準がないのであれば、自ら切り拓いていくしかない。多田は研究成果に基づき、AIを診断に用いることで生じる倫理的な課題や適正な使用の指針について検討を重ね、関係機関とも連携した。AI内視鏡をはじめとするプログラム医療機器の早期承認を図る日本政府の方針も追い風となり、今回の製品化に漕ぎ着いた。

「社会実装に至るまでは苦難の連続でした。ひとつの医療機器をリリースするのに、6年もの時間を要するとは、正直想像もしていなかったです。しかし、法規制の整備や資金のサポート、研究機関の協力などを経て産学官と密接に連携したことで、大きな価値を持つ製品が生まれたと感じています」

“オールジャパン”で生み出した技術が世界に広がる未来

AIメディカルサービス  代表取締役CEO 多田智裕

AIメディカルサービス 代表取締役CEO 多田智裕


「未来を拓くイノベーションTOKYOプロジェクト」に採択されたことも、さまざまな面で利点があった。

「まずはブランディングですね。東京都から可能性を認められた事業ということで信頼性が高まり、多くの企業や研究機関から注目されるきっかけになりました。また、経営の専門家の方からアドバイスをもらえる点も助かりました。競合製品との比較検討や費用計画など、実装に向けて見通しが甘かったところも指摘いただいたおかげで改善することができました。コロナ禍で先行きが不透明な中、事業の社会的な意義を理解してくださり、柔軟に対応いただいたことにも感謝しています」

日本の産業界を代表する企業からの出資、政府や自治体による補助金や実用化促進に向けた動き、AI分野の専門家との共同研究、そして医療機関による20万本以上の動画データの提供や数千名に及ぶ医師の協力。AIを活用した内視鏡診断ソフトの社会実装は、“オールジャパン”といっても過言ではない体制によって実現した。ひと息つく暇もなく、「がんの見逃し」撲滅という夢に向けて多田は先を見据えている。

「AIは常にバージョンアップを続けているので、精度の改善に向けた取り組みは今後も留まりません。今回の製品は胃がんが対象ですが、食道がんをはじめとする他の器官にも対応できるよう進めていきます。また、検出のみならず、がんか否かを鑑別できるレベルにまで技術を向上したいとも考えています」

技術向上と並行して多田が目指すのは、全世界へのビジネス展開。ニューヨークとシンガポールに拠点を構え、すでに各国との連携も始まっている。

「2024年2月19日付でシンガポールにおいて弊社の胃がん鑑別AIの審査および医療機器登録手続きが完了しました。また、ブラジルでも、近いうちに薬事承認が下りることを期待しています。また、アメリカのメモリアル・スローン・ケタリングがんセンターやスタンフォード大学医学部との共同研究も進めています。現在も各国から製品に関する問い合わせがきているので、これを起点に事業規模を全世界へと拡大したいですね」

「gastroAI™ model-G」の販売が始まり、世界展開への大きな一歩を踏み出した今。多田はどのような未来を描いているのだろうか。

「胃がんは早期に発見できれば98%以上が完治する病気です。しかし、内視鏡検査での見逃しによって、推定で年間400万人もの助かる命が全世界で失われている。私たちの製品によって、その数を半減、究極的にはゼロにすることが目標です」

胃がんによる死者がいなくなる社会を目指し、AIメディカルサービスの飽くなき挑戦はこれからも続いていく。


未来を拓くイノベーションTOKYOプロジェクト
都内のベンチャー・中小企業等が、事業会社等とのオープンイノベーションにより事業化する革新的なプロジェクトを対象に、その経費の一部を補助することにより、大きな波及効果を持つ新たなビジネスの創出と産業の活性化を図る事業。

AIメディカルサービス
2017年設立。医療機関から良質な内視鏡検査データを収集し、そのデータをAIに学習させることで、早期がんを検出・鑑別するための内視鏡AIソフトウェアを開発・提供する。


多田智裕(ただ・ともひろ)◎株式会社AIメディカルサービス、代表取締役CEO。東京大学医学部 大学院卒業。ハーバード大学医学部に研修留学。2006年、「武蔵浦和メディカルセンター ただともひろ胃腸科肛門科」を開業。東京大学医学部附属病院、大腸肛門外科学講座の非常勤講師としても勤務。2019年にAI医療機器協議会を設立。

Promoted by 日本総合研究所 | text by Shunsuke Kamigaito | photographs by Yoshinobu Bito | edited by Mao Takeda

ForbesBrandVoice