欧州

2024.03.08

オランダ議会、大麻の合法販売実験から首都アムステルダムを除外

オランダの首都アムステルダムにある大麻販売店。2022年12月10日撮影(Stefano Guidi/Getty Images)

オランダ議会下院は5日、首都アムステルダムを合法的な大麻販売の実証実験都市に加える法案を否決した。これにより、同市は実証実験都市リストから除外されることになる。

オランダでは大麻は違法とされているが、政府は長年にわたって寛容な政策を維持してきた。同国では大麻の栽培は禁止されているものの「コーヒーショップ」と呼ばれる大麻販売店の営業は法的に認められているのだ。コーヒーショップは違法な生産者から非公式な経路で大麻を入手していることが通例だが、当局はこうした行為に目をつぶっている。

オランダ政府は最近、成人向け大麻の合法化が及ぼす影響を評価するため、指定された市町村にある特定の販売店で大麻製品を合法的に販売する実証実験を開始した。実験は昨年12月に同国南部のブレダとティルブルフの2都市で開始され、両都市の指定販売店は合法的に栽培された大麻製品の提供を始めた。実証実験は現在、アルメール、アーネム、ブレダ、フローニンゲン、ヘールレン、フォールネアーンゼー(昨年1月1日よりヘレフートスライスから改称)、マーストリヒト、ナイメヘン、ティルブルフ、ザーンスタットの10都市に拡大されている。

この指定都市に首都アムステルダムを加える法案を巡り、議会下院は反対78に対し賛成72で否決。拡大が認められれば、アムステルダムは実証実験を行う11番目の自治体となる見通しだったが、これには実験を規定する現行法を調整する必要があった。

同法案を支持していたのは、主に左派と中道派の各政党だった。一方、右派政党はすべての都市で大麻の実証実験を完全に中止または一時的に中断させようとしていたが、この試みも失敗に終わった。保守系カルバン派政治党(SGP)のディーデリク・ファンダイク議員が動議を提出すると、同党のほか、極右・自由党(PVV)からも支持を得た。PVVは昨年11月の総選挙で下院の第1党となっていた。この動議は、実証実験を永久に停止するか一時的に中断するかのいずれかを求めていたが、反対110、賛成40で否決された。その後、他の政党もSGPとPVVに加わり実証実験を一時中断しようとしたが、オランダの英字紙NLタイムズは、反対99、賛成51で否決されたと報じた。

大麻の栽培と流通の管理を導入する主な目的は、違法栽培がもたらす重大な問題に対処することだ。大麻の違法栽培は長年にわたり、マネーロンダリング(資金洗浄)や外国に不正送金する「地下銀行」、高利貸しなど、さまざまな犯罪組織と結び付いてきた。

こうした背景から、オランダ政府は指定した全国10都市で、認可を受けた生産者がコーヒーショップに大麻を供給する実証実験を開始し、規制の効果を評価しようとしている。これにより、品質基準を満たした大麻製品の流通や、犯罪の減少といった効果が期待されている。

オランダのみならず、欧州各国で大麻政策改革への関心が高まっている。ドイツは先月下旬、マルタとルクセンブルクに続き、欧州連合(EU)で3番目に嗜好用大麻を合法化した。ドイツ政府も大麻販売の管理を試験する予定だ。スイスはEU加盟国ではないが、独自の大麻販売規制計画を立ち上げ、欧州諸国の大麻政策改革を評価する上で先駆的な取り組みを行っている。
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オランダの2都市、大麻合法販売の実証実験を開始

forbes.com 原文

翻訳・編集=安藤清香

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