“沈黙は共犯” 内田舞氏が語るAI、ソーシャルジャスティス

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生成AIやApple Vision Proといった革新的なテクノロジーが日常生活に広がるにつれ、私たちはこれらの技術とどのように関わっていくべきか、という問いはますます重要になってくる。

あるイベントの登壇者キャスティングで人間とテクノロジーの関係について語っていただける方を探しているなかで、米国ボストン在住のハーバード大学医学部准教授・内田舞氏に出会うことができた。



ご存知の方も多いと思うが、内田氏は小児精神科医、そして脳神経科学者であると同時に、メンタルヘルス、科学リテラシー、ソーシャルジャスティスに関するコミュニケーターとしても、日米両国のメディアで精力的に活動をしている。内田氏にテクノロジーと人間との関わりについて米国の医療分野の事例を伺うとともに、彼女が書籍を通じて伝えようとしているソーシャルジャスティスについても、当Forbes JAPANコラム記事を執筆する機会を得ることができた。

前半では内田氏が研究者・臨床医師としてみるテクノロジーの恩恵とリスクを、後半ではソーシャルジャスティス視点を通した米国の動きを教えていただく。

──医療の現場ではAIの登場によりどのような変化が出てきているのか?

内田:「臨床の現場でもマシンラーニングが注目され始めています。米国では統一フォーマットの電子カルテを多くの病院が活用しているので、データポイントが溜まり始めており、例えばどのようなリスク要因を持つ人がどのタイミングで脳梗塞や心筋梗塞などを発症する可能性が高いかなどはデータから導き出せるようになってきています。

まだ「だからこのタイミングでこの人に医療介入をすべきだ」と確実に言えるほどではないのですが、臨床医学の分野でAIがリスク予測として活用できるようになってきていると言えるでしょう。

ただ、AIが「完璧」「絶対」ではないことも同時に理解しながら、技術を使う必要があります。膨大なデータから導き出された予測があったとしても、個人への最適性は結局やってみないとわからないのです。

AIから導き出される情報は「educated guess(知識をもとにした予測)」のための重要な情報なのですが、100%個人に最適化されていると思うのは今の時点では危険だと考えています。臨床の現場で、患者への医療介入にAIが導き出した回答をそのまま採用するのかどうかは、やはり患者さん個人の状況、既往歴、更に、希望を一つ一つ対話の中で確認しながら、医療者と患者さんと共に選択をし、トライアル&エラーを通して、調整していく必要があります。」
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