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2024.03.16

望んだ言葉はなかったが、それでもこの本で変われた理由

各界のCEOが読むべき一冊をすすめるForbes JAPAN本誌の連載、「CEO’S BOOKSHELF」。今回は、ブリッジコンサルティンググループ代表取締役CEOの宮崎良一が「嫌われる勇気」を紹介する。 


心理学者アルフレッド・アドラーの思想をまとめた本書は、2013年の発売以降、多くの方に読み継がれてきました。
 
物語は、人は今からでも幸せになれると説く「哲学者」と、それに納得していない「青年」との対話形式で進むため、理解しやすく、すべての人が多かれ少なかれ抱えている迷いを解決し、幸せへと導いてくれます。
 
私が本書を読んだのは、会社が本格的な上場準備に入り、さまざまなプレッシャーと向き合う必要性が出てきたころでした。このままの自分ではダメだ、上場までたどり着く精神力が備わっていない、もっと強くならなければ、もっと強くなりたい、そう思い、手に取りました。
 
しかし、本書は、いい意味で私の期待を裏切ってくれました。
 
当社は、経営管理支援サービスを提供しており、公認会計士がコンサルタントとして企業の成長を後押しする役割を担います。創業当時から、公認会計士というプロ集団が、最大限の能力を発揮するにはどうすればよいかを常に考え、体制を整えてきました。
 
組織の意思決定は、トップダウン型とボトムアップ型に分かれます。これまでは、リーダー中心のトップダウン型のほうが経営スピードが早いとされてきました。
 
ただ、近年では、リーダーの能力に左右されやすいトップダウン型より、社員の主体性を尊重するボトムアップ型のほうが斬新なアイデアが生まれやすく、業績を伸ばす企業にこのボトムアップ型が散見されるようになりました。これは、個々が意見を出し合い、複数のプロジェクトを同時進行できるため、事業のスピードも格段にアップしているからです。
 
また、当社を含めボトムアップ型企業の社員には、自分の意見が人の役に立っているという実感、いわば、アドラーの言う「貢献感」が生じることで、自分の価値がさらに高まり、次の仕事に向かえるという好循環が生じます。これが、強さの最大の理由です。

アドラーは、「幸せ」はこの「貢献感」から生まれてくるのだと説いています。
 
本書には、私が最初に期待した「強くなるための方法」は書いてありませんでしたが、創業理念である「1人でも多くの人を幸せに導く懸け橋になる」を実現できれば、顧客企業はもちろん、働く私たちも幸せになれることを、再認識させてくれました。
 
この「貢献感」と、一日の終わりにそれがたとえささいなことであっても「成長できた」「いいことができた」という「自己成長」を日々感じることができれば、幸せに向けて加速できるように思います。
 
皆様が、「幸せとは何か」を再考する際の一助になればと思い、本書を推薦致します。

title/嫌われる勇気
author/岸見一郎/古賀史健(著)
data/ダイヤモンド社 1650円/296ページ
profile/(岸見一郎)1956年、京都府生まれ。哲学者で、アドラー心理学の研究者として知られ関連する著書多数。(古賀史健)1973年、福岡県生まれ。ライター、編集者。本書は二人の共著で、ほかにも『幸せになる勇気』などベストセラーがある。


みやざき・りょういち◎1983年、大阪府生まれ。同志社大学を卒業後、トーマツに入社。会計監査、IPO支援などに携わり、2011年Bridge(現ブリッジコンサルティンググループ)を設立。幅広い経営管理コンサルティング業務の強みを生かし、事業を拡大。

文=内田まさみ 写真=タワラ

この記事は 「Forbes JAPAN 2024年3月号」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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