だが、石油・ガス会社は化石燃料の生産を削減すべき局面にあってなお、生産拡大による成果報酬を経営幹部に支払い、自社のエネルギー移行目標や気候ポリシーに矛盾する行動をとることも珍しくないと、気候ファイナンス分野の大手シンクタンクCarbon Tracker(カーボントラッカー)は指摘する。
カーボントラッカーは2024年2月29日付けの報告書「Crude Intentions II」で、石油・ガス分野の上場企業上位25社の報酬ポリシーを分析。エネルギー移行が加速しているにもかかわらず、米オキシデンタル・ペトロリアム1社を除くすべての企業がいまだ化石燃料需要は今後も成長するとの想定の下で操業し、生産拡大に対してインセンティブ報酬を出していることを明らかにした。
再生可能エネルギー、電動ヒートポンプ、電気自動車(EV)は世界全体で急速に成長しており、国際エネルギー機関(IEA)は現行の政策下でも石油、石炭、天然ガスの需要は2030年までに頭打ちになるとみている。
また、現在の化石燃料需要は依然として大きすぎ、このままでは地球の平均気温上昇を産業革命前比で1.5度に抑えるというパリ協定の目標はとうてい達成できないとも警告している。これはつまり、化石燃料の使用に対し、より厳しい政策と規制が導入される可能性を示唆している。
カーボントラッカーのアソシエイトアナリストで報告書をまとめたサイードラスール・アシュラフカノフは、次のように述べている。「2020年代の終わりまでに、各化石燃料の需要がピークを迎える可能性がますます高まっている」
「これはほとんどの石油・ガス会社にとって(化石燃料を)徐々に減産していく計画が必要なことを意味するが、各社の報酬ポリシーを見るかぎり、そうした計画は全般的に練られていないようだ」