3月8日は国際女性デー。女性の権利を守りジェンダー平等の実現を掲げた日だ。この機会に、読者の皆さんにも、困難を抱える妊産婦の居場所づくりに目を向け考えていただけたらと思う。
困難な状況を抱える、妊産婦の居場所の必要性
2024年4月施行の改正児童福祉法の中に「妊産婦等生活援助事業」が新設された。このことを受け、2月24日、困難な状況にある妊産婦の支援を行ってきた民間団体やこども家庭庁の担当者らが集い、「妊娠期の居場所づくり」をテーマにシンポジウムを開催した。制度の網からこぼれる妊産婦に対しては、これまで主に民間の団体が、助成金や寄付金などの自主財源で支援に取り組んできたが、この法定化によって、支援の必要性が高い妊婦の住居や居場所、生活の支援などの相談事業に予算がつくことになる。
児童虐待死で一番多いのが、「0カ月0日児」と呼ばれる、生まれてその日のうちに亡くなる子どもたちだ。虐待死を防ぐためにも、安心できる居場所を持っていない妊婦を孤立させず、女性たちの健康と権利を守りながら、その尊厳を回復させ、自立に向けたサポートをすることはとても大切だ。
しかし、言うは易しで、実際の支援の現場は本当に過酷である。私も、居場所のない若い妊婦が安心して出産と子育てができる場所探しに奔走したことがある。頼れる家族がおらず、社会的養護も経験した彼女は、公的な制度にはかろうじてつながっていたが、自分にとって安心を感じられる場所が見つからず、大きなお腹を抱えて車中や友人宅を転々としていた。本人のメンタル面などの課題に加え、彼女が快適に過ごせる環境のよい住まいはなかなか見つからず、不動産業界の壁にも直面した。結局、居所が安定しないまま出産を迎えたが、タイムリミットがある中で転々と移動してしまう母体とお腹の子を守らなければならないのは、なんとも難しいと痛感した。
以前記事で紹介した、妊産婦のための居場所「ぴさら」を運営する認定NPO法人ピッコラーレは彼女のような女性たちを「漂流する」と表現する。代表の中島かおりさんは言う。
「ある時、ネットカフェにいる妊婦から相談があった。何度も何度もやりとりを重ねてようやく会うことができた時にはもう、臨月に入っている様子だった。この方に必要な支援は、母子保健と福祉どちらからもいっぱいありました。住まい、出産できる病院、すぐにかかれる病院の医療費……。全部がそろう場所はないので行政の支援をつなぎ合わせてやっていくしかないのだけど、もたもたしていると待ったなし状態の人はまたどこかに行ってしまい会えなくなる。そのつど行政につなぎ直したり、住民票がすごく遠い地方にあるとつなぐことすら難しかったり。帰る場所もなく頼れる人もいない、社会で孤立している方たちが、安全と安心を感じられる居場所がやっぱり必要だよねと、ぴさらを作ったんです」
ぴさらはシェルターではないので、スマホも使えるし、自宅のように生活ができる。スタッフがいるので困ったらすぐに相談もできる。