暗号資産

2024.03.07

スペイン政府がサム・アルトマンの暗号資産「ワールドコイン」を禁止

サム・アルトマン(Photo by Mike Coppola/Getty Images for TIME)

スペイン政府は、OpenAIのサム・アルトマンCEOが立ち上げたデジタルIDと暗号資産のプロジェクトのWorldcoin(ワールドコイン)を禁止した。

スペインデータ保護庁(AEPD)は3月6日、ワールドコインの国内での活動を最大3カ月間禁止する予防措置を通達した。同庁は、このプロジェクトに関する「複数の苦情」を受けており、その中には情報開示の不備や未成年者からのデータ収集、同意を撤回できないことへの懸念などが含まれているという。

ワールドコインは、ユーザーが「オーブ」と呼ばれるデバイスで眼球をスキャンして虹彩データを提出するのと引き換えにWorld ID(ワールドID)を発行し、独自の暗号資産を付与している。

AEPDは、ワールドコインの運営元で個人データの収集を行うTools for Humanity(ツールズ・フォー・ヒューマニティ)に対し、スペイン国内での新規ユーザーからのデータ収集を中止し、すでに収集したデータの使用を停止するよう要請した。

同機関は、生体認証データの処理には、外部へのデータ転送の可能性を含む「個人の権利を脅かす高いリスク」があるため「特別な保護」が求められると述べている。

ワールドコインのデータ保護責任者のJannick Preiwischは、フォーブスに宛てた声明で、スペインの機関が「EU法を回避」していると指摘し、同社に関する「不正確で誤解を招く主張」を広めていると述べた。さらに「World IDは、AI時代に人間とボットを区別するための、最もプラバシーを重視した安全なソリューションだ」と付け加えた。

Preiwischは、ワールドコインがTools For Humanity(ツールズ・フォー・ヒューマニティ)が拠点を置くドイツのバイエルン州のデータ保護当局と連絡を取っていると述べている。同州のデータ監視委員会のミヒャエル・ウィル会長は、ロイターの取材に対し、ワールドコインとの話し合いの結果を他の欧州の当局に「最終的な評価」として非常に近いうちに通達すると述べている。

ワールドコインの「オーブ」を通して眼球のスキャンを行った人の数は、120カ国で400万人に達したと同社は述べている。

数年にわたる開発プロセスを経て発足したワールドコインのプロジェクトは、人工知能(AI)の発展がもたらす課題を解決することを目的としており、そこには個人の身元認証に関する課題が含まれている。ワールドコインは、銀色のオーブで目をスキャンした後に、ユーザーにユニークなデジタルIDを提供しているが、その際のインセンティブとして、新規ユーザーに暗号資産のトークンを付与している。

このプロジェクトは、立ち上げ以来、技術的な問題に悩まされており、目をスキャンした後にトークンをもらえなかったと主張するユーザーもいる。また、MITテクノロジーレビューは2022年4月の記事で、ワールドコインがケニアを含むアフリカとアジアの低所得国で「このコインが何であるかをほとんど理解していない人々」から生体データを収集しているとして非難していた。

forbes.com 原文

編集=上田裕資

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