経済

2024.03.07 10:00

バフェットの「日本企業礼賛」は日銀総裁の仕事を困難にする

2024年に入ってからのデータも、現状を見る限りは期待が持てない。日本の鉱工業生産は1月に「急落した」と、Moody’s Analytics(ムーディーズ・アナリティックス)のエコノミスト、シュテファン・アングリックは述べる。同氏が指摘するように、2024年1月の鉱工業生産は、前月比でマイナス7.5%と「驚くほど」低下した。これは、コロナ禍の影響で世界経済がシャットダウン状態に陥りつつあった2020年5月以来、最も大きな下落幅だ。

だが、日銀がいまだに、宴を盛り上げるためのパンチボウル(パーティーなどで供されるボウルに入った酒。ここでは量的緩和を指す)を片付けずにいることが、日本の実体経済の状況とかけ離れた日経平均株価の上昇を煽っている。

一方で、世界のアセットマネジャーたちが日本を再発見していることには、もっともな理由がある。具体的には、この10年間のコーポレートガバナンス強化の取り組みや、不安定な世界情勢を受けて、日本がマネーの投資先として一種の安全な避難場所になっていること、そして、ゼロ金利政策などが挙げられる。

さらに2024年2月に入り、東京市場はウォーレン・バフェットから大きな後押しを得た。世界で最も有名なバリュー株投資家であるバフェットは2020年夏「オールドエコノミー」を象徴する存在とされ、忘れ去られたかに見えていた日本の総合商社株に投資し、世の注目を集めた。この時、同氏が率いるBerkshire Hathaway(バークシャー・ハサウェイ)は、初の日本株投資として、伊藤忠商事、丸紅、三菱商事、三井物産、住友商事の株式を購入したことが明らかになった。

バフェットは2023年、これら5大商社の株式を買い増しし、その持ち株比率は平均で8.5%強に達した。同氏が日経平均の急上昇を牽引し、より多くの仲間を引き入れている様子を見れば、バフェット氏が持つ別名に、新たに「東京の賢人」が加わってもおかしくはないだろう。

さらにバフェットは2024年2月24日、自身が買い増ししている5大商社の株主還元や役員報酬に関する姿勢は、米国企業と比べても「優れている」と称賛し、日本のエスタブリッシュメントを喜ばせた。

バフェット氏のさらなるお墨付きは、この1年で約45%も上昇している日経平均の上げ相場を、さらに勢いづかせている。
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翻訳=長谷 睦/ガリレオ

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