米国心臓協会(AHA)の学会誌に5日に掲載された論文によると、人工甘味料入りの飲料を1週間に2リットル以上摂取すると、心房細動を発症するリスクが約20%高まった。350mlのダイエットソーダを毎日1本飲んだ場合がこれに当たる。また、同量の加糖飲料の摂取では、心房細動リスクが10%増加した。
心房細動は最も一般的な不整脈で、心臓の上部にある心房が異常な動きをし、血流が停滞する。
研究では、37〜73歳の約20万2000人を約10年間追跡調査し、血液検査で遺伝子を調べた。すると、遺伝的素因(遺伝的感受性)に関係なく、砂糖・人工甘味料入りの飲料を2リットル以上飲んだ人は心房細動のリスクが高かった。
一方、無加糖の果汁100%ジュースを1週間に1リットル未満しか飲まなかった人は、心房細動リスクが8%低かった。
喫煙も心房細動リスクを高める可能性がある。週に約2リットル以上の砂糖・人工甘味料入り飲料を摂取し、さらに喫煙習慣もある人は、心房細動リスクが31%高かった。元喫煙者や喫煙歴のない人では、リスクの上昇は見られなかった。
研究論文の筆頭著者である中国・上海交通大学医学院の王寧薦は、「私たちの食生活は複雑で、複数種類の飲料を飲む人もいるため、今回の研究結果では特定の飲料が他の飲料より健康リスクを高めると断定はできない」と説明。「だが、研究結果に基づき、人工甘味料や砂糖の入った飲料の摂取をできるだけ減らすか、摂取しないことを勧める」と述べている。
AHA学会誌に掲載された別の研究結果によれば、米国では300万〜600万人が心房細動を発症しており、2050年までに600万〜1600万人に増えると予想されている。
甘い飲料と心房細動の関連についての研究はさほど多くないが、心臓病の専門誌International Journal of Cardiologyに発表された研究論文では、人工甘味料のアスパルテームを摂取した人の約16%が心拍の変化を経験した。
心房細動のリスク因子としては、肥満、糖尿病、心不全、中〜重度のアルコール依存症、甲状腺機能亢進症(バセドウ病など)、慢性腎臓病、虚血性心疾患などがある。だが、最大のリスク因子は高血圧(約5例に1例)と加齢だ。
心房細動の症状には、疲労感、めまい、胸部不快感、動悸や不整脈、脱力感、不安感、息切れ、運動時の倦怠感などがある。AHAによると、胸痛や胸部圧迫感もあるが、これらの症状がみられる場合は緊急の医療処置を要する。
カフェイン摂取と心房細動の関連性に関しては、相反する研究結果がある。米中毒学会の症例研究によれば、エナジードリンクに含まれる大量のカフェインは、その作用を増強するアミノ酸の一種タウリンと共に摂取することで心房細動のリスクを高める。
だが、2019年にAHA学会誌に掲載された論文では、1日1〜3杯のコーヒーを飲むと、4杯以上飲んだ場合や全く飲まない場合に比べて、心房細動の発症リスクがわずかに低下することが判明した。別の研究では、1日1杯のコーヒーで不整脈の発症リスクが3%低下することがわかった。
米心臓病学会は、心房細動のある人のカフェイン摂取量について、1日300mg以下であれば安全だとしている。
(forbes.com 原文)