これは、倒産や買収が事業の消滅を意味するのではなく、物理的・人的資本がより有能な経営陣の手に移されるという、従業員や事業の両方にとって幸せなシナリオを意味することを思い起こさせる例だ。英国の自動車市場は巨大で、欧州の自動車製造の拠点だ。そしてこの組み合わせは、英国の購入者が自国で生産されているあらゆるトップブランドのラインナップから自動車を選べることを意味する。
自動車で言えば2008年当時、ゼネラルモーターズ(GM)とクライスラーを破綻させれば米国の自動車市場の3分の2が消滅するという主張がよく聞かれた。それは杞憂だった。GMとクライスラーが所有するすばらしいブランドを考えてみたらいい。2社とも消滅することはなく、ブランド名が消えることもなかった。両社は、おそらく外国人経営者を含む優れた経営陣によって永く存続するだろう。そうなれば、良いことだ。半信半疑であれば、前述の英国をみるといい。
そのようなシナリオにならなさそうな場合、米国における鉄鋼生産が参考になる。現在、日本製鉄が米ピッツバーグに本社を置くUSスチールを買収しようとしている。おそらく驚くことではないが、かつては強大だった米大手を買収しようという話に、政治家たちはいきり立っている。国内有数の鉄鋼会社が外国企業の所有となることにともなう国家安全保障面での懸念はいうまでもなく、ありきたりだが必要不可欠な原材料が日本企業のものになることで、米国の入手が脅かされるとおそらく考えている。抗議は度を越したものだ。