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2024.03.14

広告業界でデータサイエンティストが「ものづくり」の中心にいられるわけ

博報堂DYグループが2年前に設立した「AaaS Tech Lab」は、所属する11名全員がデータサイエンティストという異色のチームだ。各メンバーは日進月歩で進化する技術を貪欲に吸収しながら、革新的なメディアのソリューション開発と誰も見たことがないコンテンツの開発に励んでいる。

AaaS Tech Labに新卒と中途で参画した若手2人に、このチームの魅力、広告会社でデータサイエンティストとして働くやりがいについて聞いた。

データサイエンスで人が笑う衝撃

近年、あらゆる企業・業界においてビッグデータの活用の重要性が叫ばれるようになった。それにともない現場でデータ分析と活用を一手に担う「データサイエンティスト」の人材市場における需要も右肩上がりとなっている。

一方、データサイエンティストの就職先としては現状、IT系企業や通信企業、エレクトロニクス、シンクタンクなどが一般的。日本企業全体でこの「新しい職業」のポテンシャルが十全に発揮されている状況とは言い難い。 

そんな中で2022年、広告業界におけるリーディングカンパニーである博報堂DYグループは、データサイエンティスト集団「AaaS Tech Lab」を設立し、広告・マーケティング・コンテンツ領域でのデータサイエンスを活用した先進的な取り組みを始めた。

その最前線で働く若手2人は、自分たちのデータサイエンスの知識とスキルが、広告の世界でどのように生かせると考えているのだろうか。

「入社前にAaaS Tech Labを知ったとき、『データサイエンスで人を笑わせることができるんだ』と衝撃を受けました」 

そう語るのは、昨年に博報堂テクノロジーズに中途採用で入社し、AaaS Tech Labでデータサイエンティストとして働く髙橋正憲だ。転職前は新卒で入った大手通信会社のR&D部門で、AIによる画像処理技術の会社での実現可能性の調査など、研究開発に従事していた。 
データサイエンスで人を笑わせられる衝撃が、博報堂テクノロジーズへの入社のきっかけとなったという髙橋

データサイエンスで人を笑わせられる衝撃が、博報堂テクノロジーズへの入社のきっかけとなったという髙橋

「そのチームは将来必要になるかもしれない技術の実現可能性の調査や研究開発を行うのがミッションでした。しかしシーズベースの部門だけに、研究の成果が実証実験や製品に結びつくことはなく、社会実装できずに終わってしまうことにモヤモヤを感じるようになったんです」

もともと髙橋は、学生時代からデータサイエンスを用いて社会に役立つ何かをしたい、と考えていた。環境・医学データに対する統計学を専攻した大学院では、新型コロナウィルス感染症の初感染が各国で観測されるまでの時間とその要因を分析する研究に従事。並行して世界最大のデータサイエンスのコンペティションとして知られる「Kaggle」にもエントリーし、学生のときからデータ分析の技術を磨いた。

社会人になり2年が過ぎ、転職を考え始めたとき、登録した転職エージェントから紹介を受けたのが博報堂テクノロジーズだった。

「それまで広告やマーケティングの業界で働くことは考えていませんでしたが、ちょうどChatGPTや画像生成AIが世の中で話題になりはじめ、『広告会社なら、AIを使ってまだ誰もやっていないことができるかもしれない』と思ったんです」

博報堂テクノロジーズについて調べるうちに、AaaS Tech Labチームリーダーの篠田裕之が「物理シミュレーションを駆使して満員電車をやり過ごす方法」といったデータサイエンスをあさっての方向に活用する自主研究を行っていることを知った。

「ユニークなだけじゃなく、例えばAIを用いてカレーのレシピを作ったら、それをちゃんと世の中に出して人々に届けているのがすごいと思いました。ここでなら面白いことができそうだ、と思ったんです」

入社してから半年が経った今、髙橋はAaaS Tech Labでディープラーニングを活用した新しいテレビ番組視聴率予測技術の開発を進めている。

「視聴率を予測する取り組みはこれまでも行われてきましたが、ディープラーニングを用いて番組に関する幅広いデータや番組枠の中長期の傾向を加味することでより精度の高いアルゴリズムを開発することにチャレンジしています」

「視聴率」以外のメディア価値を可視化する

髙橋の同僚で、同い年のデータサイエンティストの青山格は、2021年に新卒で博報堂DYメディアパートナーズに入社した。

学生時代は経営システム工学科でプログラミング、機械学習や数理最適化などデータサイエンス領域を学び、ECサイト上のユーザーに対して意外性のある「商品」を推薦するアルゴリズム開発の研究を行っていた。

「自分がいた専攻が、企業経営やマーケティングを対象として工学的な観点からアプローチすることを目指す学問領域だったので、広告やマーケティング / メディアを扱う博報堂DYメディアパートナーズに興味を持つのは自然な流れでした。

入社1年目は視聴率やデジタル広告のCVといった広告効果を予測するシステム開発を行う部署で働き、2年目のときにAaaS Tech Labが設立され、創設メンバーの一人になりました」

青山も髙橋と同様に、テレビの視聴率データに新たな角度から光を当てる仕事に取り組む。

「広告主にとってテレビ番組やコンテンツへの出稿・協賛価値は視聴率で評価されることが多いですが、番組を通して得られた視聴体験や実際にどのような趣味嗜好を持つ人に視聴されたかを分析することは重要だと考えています。

以前は『20代の女性』『60代以降の男性』といったような非常にざっくりとした属性でしか視聴者を分類できませんでした。それに対して私たちは今、番組に関するSNSの投稿やユーザーのプロフィール文を自然言語処理によって解析することで、どんな人がどれぐらい番組を見てどんな感想を抱いたか、SNS上でどのような議論が起こったかを捉える試みを始めています。

視聴率以外の側面からコンテンツ価値を可視化することは、クライアントと同時に番組を提供するメディア側にも大きなメリットがあるはずです」
あるリアル型イベントにおけるSNS投稿から視聴者をクラスタリングした結果

あるリアル型イベントにおけるSNS投稿から視聴者をクラスタリングした結果

その仕事と並行して青山が進めるのが「データサイエンスを活用した新たなコンテンツ開発」だ。

昨年は番宣を画像生成AIによって、様々なシチュエーションに変換することでリサイクルし、新たな番宣映像を制作したり、会津大学・福島テレビと協同したりして、「LLM(大規模言語モデル)を利用して自分を模したエージェントを作り、テレビ番組の視聴予測を行う」というワークショップを開催した。

エージェントとはAIの分野で「自分の置かれた環境を正確に認識し、それに基づき適切な思考、行動をとる存在」のことをいう。
ワークショップ中の講義音声から青山をGPTエージェントとして再現した

ワークショップ中の講義音声から青山をGPTエージェントとして再現した

「例えばリアルな人間100人を一箇所に集めてその場で起こる相互作用を検証することはすごく大変です。

しかしLLMが個別の人格をもったようなエージェントであれば、バーチャル空間で同時に100人、1000人を集めて相互作用させることが簡単にできます。

また、個別のエージェントを作る際に与えるデータによってもエージェントの振る舞いは変化します。そんなマルチエージェントシミュレーションから、マーケティング・メディア的な側面でどんな創発や発見が生まれるか興味があります」と青山は語る。
 データサイエンスを生かしたコンテンツ開発のおもしろみを語る青山

データサイエンスを生かしたコンテンツ開発のおもしろみを語る青山

このようにAaaS Tech Labでは、視聴率のデータ分析をはじめとするソリューション開発以外に、メンバー各自が自由にデータサイエンスを用いた新たなコンテンツを開発することを奨励している。

髙橋もこれまでに得た知見を生かし、「NeRF(ナーフ)」と呼ばれる最先端の映像技術を用いた表現についての研究を続ける。

「NeRFは、対象物をさまざまな角度から撮影することで、好きな視点からその物を見ることを可能にする技術です。最近では世界的なファーストフードチェーンのCMや、日本のトップアイドルグループのPVなどに活用が始まっています。VR、AR、ゲーム開発など、多岐にわたる分野でまだまだこれから発展が期待される技術の一つです」

NeRFの技術が一般化すれば、例えば自動車のWEB上のカタログは、本当にその車を目の前にしたときのように、ダッシュボードの中や座席の下、エンジンルームまで、自由な視点で覗き込めるようになる。

映像やゲームなどのコンテンツも、今より圧倒的な臨場感を持って作り出すことが可能となるだろう。

髙橋が制作した、NeRFを使った映像の例

時代の変わり目だからこそ広告業界に可能性

こうした最先端の技術をチーム全員がキャッチアップするために、週に1回、AaaS Tech Labではメンバー持ち回りによるナレッジシェア、「研究発表」が行われている。

「Lab」の名の通り、各人が関心領域のテクノロジーの動向について調べるだけではなく、実験や制作まで行い、他のメンバーにプレゼンすることで、先端技術を取りこぼしなく全員が知ることができている。

また先述の「Kaggle」をはじめとしたデータ分析のコンペティションに出場することも奨励されており、過去に入賞経験のある青山、髙橋は「Expert」の称号を獲得している。
自分の思い出を表す画像から音楽を生成しビジュアライズ

自分の思い出を表す画像から音楽を生成しビジュアライズ

ふたりから見たAaaS Tech Labとはどのような組織なのだろうか。

中途入社で他社で働いた経験を持つ髙橋は「博報堂DYグループという非常に長い歴史を持つ広告会社が母体にあるのは、とても大きい意義があると感じます」と語る。

「データの分析とコンテンツの開発は、車の両輪のような関係で、相互に良い影響を与えあうことで大きな成果を生みます。

我々データサイエンティストは、データ分析には長けていますが、コンテンツを最終的な形にするならば、映像やデザインやコピーライティングのプロの力を借りたほうが絶対に良いものができる。博報堂DYグループにある膨大な人的資産がデータサイエンスと組み合わされば、広告の世界にまったく新しいクリエイティブがもたらされると思います」(髙橋)

従来のクリエイターと協業することの意義を語る髙橋の意見に同調しつつ、青山は「一方でものづくりの仕事の『中心』にデータサイエンティストがいられるのが、広告業界の面白さだと思います」と語る。

「データサイエンスの力を使って、従来からのクリエイティブ職である、デザイナーやコピーライターとはまったく異なる視点、手法で僕たちなりのコンテンツを作ることができる。

自分の名前のついた成果物を世に問うことができるのが、この業界でデータサイエンティストが働く魅力だと感じています」(青山)

振り返れば広告業界は、ラジオ、雑誌、新聞、テレビ、インターネットと、新しい「メディア」が生まれるたびに新たな表現を生み出し、成長を続けてきた。

AIやデータサイエンスがメディアのあり方そのものを変えようとしている今、広告・マーケティングも否応なく次の形へと進化していくはずだ。AaaS Tech Labの若き2人のデータサイエンティストがこれからどんなものを生み出すか、注目を続けたい。

AaaS Tech Lab
https://www.hakuhodody-media.co.jp/aaas/atl/

たかはし・まさのり◎岡山大学大学院環境生命科学研究科生命環境学専攻を経て、2021年に通信企業に新卒入社。23年、博報堂テクノロジーズ入社。前職ではコンピュータビジョンの研究開発に従事。個人では日頃からKaggleに取り組んでおり、テーブルデータや画像系のコンペで複数のメダルを獲得。Kaggle Expert。

あおやま・つとむ◎ 2021年早稲⽥⼤学大学院創造理⼯学研究科経営システム⼯学専攻修了。機械学習/数理計画を専攻し、ECサイトのレコメンドアルゴリズム開発に取り組む。データサイエンスコンペティションにて受賞経験多数。Kaggle Expert。同年博報堂DYメディアパートナーズ新卒⼊社。機械学習モデル構築/メディア・コンテンツ開発業務に従事し、翌22年に博報堂テクノロジーズ出向。

Promoted by 博報堂テクノロジーズ text&edit by Yutaka Okoshi / photographs by Shunichi Oda

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