「富永選手が試合で決めたゴールがバズり、その翌々日には富永選手のトレードマーク・ポーズの写真をプリントしたグッズを着た学生がキャンパスを歩いていたことが話題になりました。ネブラスカ大学では学生デザイナーが選手のグッズをデザインして、大学が管理運営するオフィシャルECサイトで販売しています。グッズのデジタル制作と物流に関わるノウハウと、それぞれをつなぐプラットフォームが成熟したことで、従来であればソーシャルメディアでバズって終わるイベントが、大きなNILビジネスに成長しようとしています」
学生スポーツをビジネスとして見ることには、米国内でもモラルに反するという声も上がっている。実際、周辺には金銭に関わるトラブルも少なくないようだ。教育の一環として位置付けられている日本の学生スポーツと、NILビジネスはなおさら相容れるものではないかもしれないと宮田氏も指摘する。
だが一方でNILビジネスによる成功は、若いアスリートが自身の競技環境を金銭的に充実させる手段でもあり、また同時に競技を続けるためのスポンサーを獲得するための大事な機会となっている。企業の側にとっても、若く有望な選手に早い段階から見つけて応援するメリットは大きい。双方に利益をもたらすNILビジネスが、米国の学生スポーツを発展させる側面があることにも目を向ける必要がありそうだ。
宮田氏のスクラムベンチャーズもNILビジネスに注目している。同社は2023年秋、学生アスリートのためのNILビジネスプラットフォームである「CampusInk」に投資した。同社にはオリジナルTシャツやグッズのデザインに始まり、これを製造・販売するところまでユーザーがワンストップで行えるソリューションがある。CampusInkのような企業が今後、学生アスリートによるNILビジネスと競技における成功をプロデュースする役割を担うのだろう。