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2024.03.25

なぜ総合総社が「街づくり」なのか? 三井物産が目指す都市DXの展望

三井物産エネルギーソリューション本部Sustainability Impact事業部新事業開発室長・生澤一哲(左)とGEOTRA代表・陣内寛大

人流データの分析を皮切りに、都市が抱える課題の可視化を目指す三井物産。応用可能性から今後の展望、仮想空間の活用まで、三井物産エネルギーソリューション本部Sustainability Impact事業部新事業開発室長・生澤一哲と、三井物産からの出向者であるGEOTRA代表・陣内寛大が語り合う。


生澤一哲(以下、生澤): 当社では、エネルギーソリューション本部を中心に、CO2を含む温室効果ガスの排出量の実質ゼロを目指す、いわゆるカーボンニュートラル社会の実現や気候変動問題に対する取り組み・事業を進めており、当室ではそこに関連する新事業の開発に取り組んでいます。

当然ながら、気候変動問題への取り組みは、産業横断的な対応が必要で、各国の政策や規制の変化や革新的な技術・サービスの出現など、急速な変化が進む領域でもあり、当社単独ですべてできるわけではありません。

どうすれば当社らしさを活かしたソリューションの提供をできるのか、社内はもちろんのこと、社外のパートナーの方々との連携を行い、試行錯誤しながら、新規事業を開発してきました。

具体的には、企業の事業活動のCO2排出量の可視化から削減まで一気通貫で総合的な支援を行う「e-dash」や生活者一人ひとりのアクションで脱炭素社会を推進する共創型プラットフォーム「Earth hacks」といった事業です。

我々が生活する街や都市も同様に、さまざまな課題が絡み合うなか、単発の施策ではなく「都市」という大きな枠組みで考えていく必要があるし、いろんなプレイヤーと連携していく必要がある。そのなかで、総合商社の機能やノウハウが生かせるのではないか。これこそが我々商社が「街づくり」に取り組み始めた背景です。

陣内寛大(以下、陣内):サステナブルな街づくりや都市DXは非常に大きなテーマなので、私も新事業の担当者に任命された際、どこから手をつけるべきか悩みました。国内事例を調べてみても、自社のもつソリューションを中心に据えた施策が目立ち、都市の課題に包括的にアプローチしているケースはそう多くなかった。

そこで、まずは「今、何が都市の課題とされているのか」を特定するところから始めることにしたのです。

生澤:プロダクトアウトの発想で売りたいものから逆算して課題をつくり出しても意味がないという思いはありました。新事業で都市の課題を明らかにし、その解決に向けて当社として総合的なソリューションを提供する。そんなかたちが実現できたら、三井物産らしい取り組みになるのではないかと。

海外事例を徹底的に分析し機械学習モデルを開発 


――「都市の課題」の可視化にはどのように取り組みましたか。

陣内:最初に行ったのは、海外事例の調査です。

アメリカでは、すでにスマートシティに関する優れた取り組みがいくつもなされています。それも抽象的なコンセプトではなく、「都市には今こういう課題がある。従って、このサービスを提供する」という具体性の高いソリューションが多かったんですね。なぜそれが可能なのかというと、そもそもテック系企業が都市のデータをたくさんストックしていて、それをオープンにする文化があるからです。例えば、Uberが利用者の履歴を公開し、行政がそのデータをもとにインフラ整備の計画を立てる、といった事例があります。

生澤:データがある種の公共財になっていて、同じことを日本でもできないかという発想が出発点でした。「街で何が起きているのか」を知るためには、まず人の移動実態、すなわち「人流」をデータとしてとらえなければならない。そして国内で人流データといえば、大手通信キャリアのもつユーザーのGPSデータです。そこで、KDDIに合弁会社の設立を打診することになりました。

陣内:そこから1年ほどの準備期間を経てGEOTRAを立ち上げることになりますが、いちばん苦労したのは人流を分析するためのデータ生成モデルの開発です。

開発にあたってはアメリカの企業をベンチマークにしていましたが、彼らがどんな技術を用いているのかは当然どこにも公開されていません。そこで、オープンになっている論文や講演を徹底的に調べ、「おそらくこんなやり方で分析しているんじゃないか」と類推しながらモデルをつくっていきました。
GEOTRAが開発した、AIによる高粒度人流データの生成方法:独自開発されたAIの「合成データ生成モデル」により、プライバシーが保護された状態で現実世界と同じように移動する「高粒度人流データ」を生成。

GEOTRAが開発した、AIによる高粒度人流データの生成方法:独自開発されたAIの「合成データ生成モデル」により、プライバシーが保護された状態で現実世界と同じように移動する「高粒度人流データ」を生成。

インフラ老朽化の可視化にも役立てる

生澤:実際に立ち上げてみると、思った以上にさまざまな事業者さんから反応がありました。

陣内:地方自治体の方々から反響が大きかったのは、意外だったかもしれません。現在、橋やトンネルといった交通インフラの老朽化が全国的に課題になっています。あまりにも数が多く、すべてを修繕するのは予算的に不可能なため、どこを優先的に直すかを決断しなければなりません。GEOTRAの技術を使うことで「どの橋が使えなくなると、最も人流に影響が出るのか」といった情報を可視化すれば、修繕の優先順位付けに役立つことでしょう。

生澤:サステナビリティの観点からも、インフラ老朽化への対応は急務です。災害復興の際にも、どの道路から復旧していくかを判断するのに役立てられるのではないかと考えています。

陣内:防災も我々が貢献できる領域ですので、ぜひ今後も進めていきたいですね。交通インフラへの応用については、現在大学の先生方と議論しながら実現化を目指しているところです。

人流以外のさまざまなデータも活用 


生澤:GEOTRAが扱う人流データは都市の基礎的な構成要素のひとつですが、都市のデータはそれ以外にもあります。防災や衛生の観点では空気の流れが、バリアフリーを考えるなら細かな段差の情報が必要になるでしょう。街づくりの目的に応じて、求められるデータや精度は変わってきます。ですので、当社としての街づくり事業の今後の広がりを考えると、GEOTRAによる人流データはもちろん、それ以外のデータの取り込みや連携による事業拡大の余地は大きいと考えています。こういった観点で、建設物や道路等、都市の様子を仮想空間上に忠実に再現する「デジタルツイン」を活用したサービス展開の可能性もありうると考えています。

そうした複合的なデータ分析や可視化は多様なステークホルダー間での共通認識の構築や取り組みへの説得力の向上、ひいては合意形成促進にも資するものと考えています。

陣内:GEOTRAとしても、人流データの三次元化にも取り組んでいきたいです。現状はGPSを活用しているため、高さのデータが取得できません。東京は立体的な都市なので、同じ建物のなかにもさまざまなフロアがあります。その情報が取れるようになれば、さらに精緻な分析が可能になると考えています。

生澤:仮想空間というと、今までエンタメ領域での利用のイメージが強かったかもしれません。しかし、再開発や街づくりの場面においても、都市のシミュレーションは大いに役立つと我々は考えます。

陣内:おっしゃる通りですね。現実の都市では、何かを試しに建てるにしても膨大なコストと時間がかかります。法規制もありますし、ステークホルダーも多い。そのために、実験的な取り組みにブレーキがかかっていた側面もあると思います。仮想的な都市空間での検証であれば、そういった制約もありません。またビッグデータを活用し、さまざまなパターンを事前に検証できれば、これまで「勘と経験」で行われてきた街づくりに、より客観性と説得力をもたせられるのではないでしょうか。

生澤:都市×ビッグデータの領域は、まだまだ可能性がありそうですね。街づくりがデジタルツインによってオープンに開かれることで、市民の皆さんも今まで以上に関心を持ってくださるかもしれない。そんな未来に期待したいです。

――最後に、三井物産がGEOTRAの事業を通じて実現したいことを教えてください。

陣内:「都市×ビッグデータ」の取り組みをようやく立ち上げたばかりなので、さまざまな事業者の方々と協力しながらユースケースを広げていきたいと考えています。個人的な思いとしては、「都市×ビッグデータ」の領域を、誰もが知っているようなムーブメントにまで育てていきたいですね。

――海外展開については?

陣内:積極的に狙っていきたいです。特に東南アジアにおいて、日本の都市計画は未だに影響力をもっています。鉄道の沿線上に都市をつくっていく日本の街づくりのやり方は、アジアの多くの国がお手本にしてくれています。日本が強みをもつ領域だと思うので、積極的に参入していきたいですね。

生澤:冒頭でも述べたように、持続可能な街づくりを進めるための課題は複合的で産業横断的な解決が求められます 。しかし、そうした問題にアプローチできることにこそ総合商社の強みがあると我々は考えます。

GEOTRAのような新事業を通じて先陣を切り、そこで可視化された都市の課題に対し、各事業本部がもつソリューションを提供していく。そんなふうに、全社的に横串を通しながら、街と暮らしの課題解決に貢献していければと考えています。


いけざわ・かずのり◎三井物産エネルギーソリューション本部 Sustainability Impact事業部 新事業開発室 室長。北米、欧州、アジアで電力などの大型インフラ事業の開発およびM&Aに従事。2019年より現職。

じんない・のぶひろ◎2018年三井物産入社。DX関連事業立ち上げや全社DX戦略の策定等を担当。2020年よりスマートシティ等の新規事業開発に従事し、KDDIとともに、GEOTRAを設立。代表取締役社長を務める。

Promoted by 三井物産 text by Tomoya Matsumoto | photograph by Kei Ohnaka | edited by Daisuke Sugiyama(Note, Ltd.)

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