しかし、理由はそれだけではない。フロリダ州のケネディ宇宙センターからロケットが発射されたあと、ただ庭に出るだけで、暮れかけた空に輝く月と金星、それに明るい星々を見ることができた小さな町で私は育った。
私は今年、北米が冬である時期のほとんどを、赤道のはるか南にあるチリとアルゼンチンで過ごしている。最初はチリで天文学の学会に出席し、そのあと、ブエノスアイレスの南にある電波望遠鏡を訪れたのだ。
南米の夏を楽しむ時間の余裕もあったので、私は、宇宙のなかでの地球の動きについても思いをめぐらせた。つまり、地球が太陽を周回する軌道や、地軸の歳差運動が、地球の気候が長期的スパンで安定し予測可能なものになるようなかたちで行われており、それがこの星に我々が知る生命が誕生する上で不可欠だったと考えられていることだ。結果として私は、惑星科学と天文学が、日常生活にどのような根本的な役割を果たすかについても考えることになった。
息を呑むような大空の眺望を楽しめる地域、例えば米国南西部の砂漠やハワイ、南アフリカ、オーストラリア、チリ、アルゼンチンに暮らす人々は、より強く天文学に興味を抱くように育つといえるだろうか?
チリ北部のアタカマ砂漠は、いわば天文学の楽園だ。地球上にこのような場所はほとんどない。空はこの上なく晴れ渡り、光害も比較的軽微だ。加えて、チリとアルゼンチンには、北半球では見ることのできない天の川銀河の全体を見渡せる地域がある。
澄んだ空が、天文学への関心を高める
チリのサンティアゴにあるアンドレス・ベーリョ国立大学で生化学と化学を教えるエステラ・ペレス教授は、自身の天文学への情熱は、幼少期に慣れ親しんだ風景がきっかけだったと語る。つまり、チリ南部に無数にある大きな湖の上に広がる、澄んだ夜空のことだ。現在、天文学の啓発普及の地域活動を行っているペレス教授によると、チリではどこでも、首都サンティアゴでさえ、人々は外に出て夜空を見上げ、スマートフォンのアプリで知らない星を調べているという。だが、澄んだ夜空という特権はあるにしても、チリ国内の職業天文学者たちは、同国北部に点在する国際望遠鏡をもっと長く利用する必要があると、同氏は語る。