ビッグ・クエスチョンを投げかける
先日の日曜午後、私はサンティアゴのビセンテナリオ公園で、パドルボールや愛犬とのボール遊びをして過ごす人々を横目で見ながら、沈みゆく夕日を座って眺めた。つまり地球に最も近い恒星が、マンケウエ山の裏に隠れていくところをだ。そして、この光景がもつ大きな意味に思いを馳せた。私はまたしても、謙虚な気持ちになった。莫大な時間的・空間的広がりをもつ宇宙のなかでは、ヒトの短い生涯は、本当にわずか一瞬のできごとであることを実感したからだ。その上、どんなに優秀な理論物理学者を集めたとしても、宇宙の大部分はいまだに理解されていないままなのだ。
こうした天文学的なテーマは、誰もが日常のなかで直面するものだ。そして、どんな宗教や哲学も、私たち人類の存在、あるいは宇宙における人類の立ち位置という、大いなる謎に完全な答えを与えてはくれない。
だが、天文学は普遍的なものだ。
天文学の知識を何1つ持っていない人でも、夜空を見上げれば、人間の社会や地球とはかけ離れた世界があることを実感する。人だけではない。フンコロガシやゼニガタアザラシやアホウドリといった生物は、みな天球を認識している。その方法は、私たちにとって、いまだに驚異的であると同時に不可解だ。
長期的視点を持つことの必要性
だからこそ、NASAジェット推進研究所の人員削減に、米国議会がひと役買ったことは残念でならない。ジェット推進研究所はこれまで、税金を投入した研究に関していえば、NASAのどの研究機関よりも世間に多くを還元してきた機関であることは間違いない。議会ニュース専門メディアであるCQ Roll Callは「NASAの内部調査により、火星サンプル回収プログラムに、当初の予測よりも長い期間とコストが必要であることが明らかになった」と報じた。NASAへの資金拠出をめぐって、議会の意見は割れており、そのためジェット推進研究所は先手を打って、全職員の8%のレイオフを発表した。
一方で、火星のジェゼロ・クレーターには、回収を待つサンプルが存在する。そのサンプルは、火星に生命が存在したことはあるのかという疑問に、答えをもたらす可能性があるものだ。
観測天文学は、私たちが住む地球がいかに奇跡的な存在であるかを気づかせてくれる。地球に最も近い惑星である金星と火星は、およそ居住可能とはいいがたい。
要するに、私が言いたいのは、たとえ凍えるほど寒い冬であっても、外に出て、夜空を眺めてみようということだ。そうすれば、宇宙の驚異の1つであるこの星に生きているという事実に、感謝せずにはいられないだろう。
(forbes.com 原文)