グロービス・キャピタル・パートナーズは、20年7月のプレシリーズAからestieにリード投資。同社が総額10億円の資金を調達した22年1月のシリーズAでも追加出資した。同VCパートナーの湯浅エムレ秀和はなぜ投資したのか。
湯浅:最初に平井さんにお会いしたのは2019年の12月ごろ。オフィスなどの商業用不動産業界に大きなDXの市場機会があることを知り、すごくワクワクしました。それで、事業の方向性などについて2週間に1度のぺースでディスカッションさせていただくようになったんです。
平井:売り上げもないプロダクトのリリース前の段階で、親身に相談に乗ってくれたことはありがたかったです。クールでクレバーな印象のエムレさんですが、議論を重ねるなかですごく熱い人だとわかり、仲間になってほしいと強く思いました。
湯浅:20年2月14日のことは今でもよく覚えていますよ。平井さんと2人で東京・丸の内にあるニューヨーク発のピザ屋さんに行ったのですが、バレンタインデーで、周りのお客さんはカップルだらけで(笑)。みんな愛を語り合っているなか、ひたすら商業用不動産業界のDXについて語り合ったのはいい思い出です。
平井:それで、同年4月に「estieマーケット調査」をリリースしたのですが、当時、日本はコロナ禍の緊急事態宣言の真っただなかで。不動産業界も今後どうなるのか不透明なタイミングでしたが、エムレさんは投資の決断をしてくれた。
湯浅:うまくPMF(プロダクトマーケットフィット)できるだろうという確信がありました。まず、業界のペインがとてつもなく大きい。オフィス物件の一元化されたデータベースが業界には存在していなくて、テナント側は、どこに利用可能な物件があるのかまったくわからない。仲介会社も網羅的な情報をもっておらず、みんなが限られた情報の中でやりくりしているのが現状です。情報のやり取りも信じられないくらいアナログ式で、デベロッパーや仲介会社にとって大きな負担になっている。業界出身者の平井さんには、その構造的な課題が誰よりも高い解像度で見えているし、すごく優秀な仲間を次々と迎え入れている。私は投資前に必ず候補先企業のオフィスを訪問するのですが、estieにお邪魔して、いい意味で大学のサークルというか、部室みたいな雰囲気を感じました。同じ志をもった人たちが、和気あいあいと一生懸命に働いている。