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2024.03.05 14:30

DXで商業用不動産業界のペインをなくす

(写真左)湯浅 エムレ 秀和|グロービス・キャピタル・パートナーズ(同右)平井 瑛|estie

平井瑛は2018年12月、estieを創業した。同社は、オフィスを中心とする商業用不動産業界のデータ流通の課題を解決するプロダクトを展開。主力サービスの不動産データ分析基盤「estie マーケット調査」は、全国8万棟/40万フロアの物件情報や500万坪の募集情報、24万件の賃料情報、主要都市40万件の入居企業情報など、オフィス賃貸業務に必要な情報を網羅。不動産デベロッパーや資産運用会社、プロパティマネジメント会社など幅広い業態の不動産事業者に利用されている。

グロービス・キャピタル・パートナーズは、20年7月のプレシリーズAからestieにリード投資。同社が総額10億円の資金を調達した22年1月のシリーズAでも追加出資した。同VCパートナーの湯浅エムレ秀和はなぜ投資したのか。

湯浅:最初に平井さんにお会いしたのは2019年の12月ごろ。オフィスなどの商業用不動産業界に大きなDXの市場機会があることを知り、すごくワクワクしました。それで、事業の方向性などについて2週間に1度のぺースでディスカッションさせていただくようになったんです。

平井:売り上げもないプロダクトのリリース前の段階で、親身に相談に乗ってくれたことはありがたかったです。クールでクレバーな印象のエムレさんですが、議論を重ねるなかですごく熱い人だとわかり、仲間になってほしいと強く思いました。

湯浅:20年2月14日のことは今でもよく覚えていますよ。平井さんと2人で東京・丸の内にあるニューヨーク発のピザ屋さんに行ったのですが、バレンタインデーで、周りのお客さんはカップルだらけで(笑)。みんな愛を語り合っているなか、ひたすら商業用不動産業界のDXについて語り合ったのはいい思い出です。

平井:それで、同年4月に「estieマーケット調査」をリリースしたのですが、当時、日本はコロナ禍の緊急事態宣言の真っただなかで。不動産業界も今後どうなるのか不透明なタイミングでしたが、エムレさんは投資の決断をしてくれた。

湯浅:うまくPMF(プロダクトマーケットフィット)できるだろうという確信がありました。まず、業界のペインがとてつもなく大きい。オフィス物件の一元化されたデータベースが業界には存在していなくて、テナント側は、どこに利用可能な物件があるのかまったくわからない。仲介会社も網羅的な情報をもっておらず、みんなが限られた情報の中でやりくりしているのが現状です。情報のやり取りも信じられないくらいアナログ式で、デベロッパーや仲介会社にとって大きな負担になっている。業界出身者の平井さんには、その構造的な課題が誰よりも高い解像度で見えているし、すごく優秀な仲間を次々と迎え入れている。私は投資前に必ず候補先企業のオフィスを訪問するのですが、estieにお邪魔して、いい意味で大学のサークルというか、部室みたいな雰囲気を感じました。同じ志をもった人たちが、和気あいあいと一生懸命に働いている。
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文=眞鍋 武 写真=平岩 享

この記事は 「Forbes JAPAN 2024年3月号」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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