政治

2024.03.04 10:00

ロシア、中国の自国侵略に深い懸念 流出文書で明らかに

Kuleshov Oleg / Shutterstock.com

中国の侵略を撃退するためにロシアがどのように核兵器を使用するかを、英紙フィナンシャル・タイムズのマックス・セドンとクリス・クックが明らかにした。漏出した機密文書を基にしたこの興味深い報道は、力を取り戻した中国がロシアの東部領土の併合を試みるかもしれないと、ロシアが長年深く懸念してきたことを裏づけている。

中国とロシアが数年前に「無制限」の友好を宣言したことを考えたとき、無頓着な西側の人々には、この国境を接する2国の間で核兵器を用いた応酬が行われる可能性は低いように思えるかもしれない。だがロシアは、国境を接する友好関係はすぐに変わり得ることを知っている。前回、中国と旧ソ連が友好条約を結んだときは、20年も経たないうちに国境をめぐってひどい紛争が起きた。

アジア全域での中国の行動は、過去のささいな仕打ちや長年にわたる領土の喪失を中国がずっと覚えていることを示している。領土拡大にこだわる中国の民族主義者らは、ロシアの軍事的弱点を中国がますます蔑むようになっていることと相まって、過去の敗北に対する憤りを利用して衰退したロシアに十分歯向かうことができる。

ロシアはこのことを知っており、中国の冒険主義を抑止するのにかなり苦心している。ロシア陸軍が過剰なまでにウクライナに注力しているにもかかわらず、ロシアは昨年、核弾頭の搭載が可能な弾道ミサイル「イスカンデル」の演習を「中国と国境を接する地域」で2回行った。

中国による国境を超えた侵略に核を用いて対応するというロシアの計画の具体的な証拠は、やがて中国が人口の少ないロシア東部の領有権を主張し始め、長い間無視されてきたロシアのアジア系市民を擁護するために手を差し伸べるかもしれないと、ロシアがいかに懸念しているかを明らかにしている。

興味深いことに記事では、ロシアの核を用いて対応するシナリオを、中国軍がロシア領内に侵入した後、主に同軍を標的にする最後の自衛手段ととらえているようだ。これはひどい話だ。このような想定は、欧州重視のロシア軍の幹部らが、アジア系のロシア市民がいるところで核兵器を使用することにほとんど良心の呵責を感じないことを示唆している。

奇襲阻止で核兵器を使用する要件

フィナンシャル・タイムズの恐れを知らない2人の記者は「2008〜14年に作成された29のロシア軍の機密文書」にアクセスした。そこには「戦闘作戦のシミュレーションや、核兵器使用の運用原則を議論する海軍将校向けのプレゼンテーション」が含まれていた。

2人は、ロシアの核兵器使用の要件が非常に緩く設定されていることを発見した。核兵器の使用に踏み込む事態には「ロシアの戦略弾道ミサイル潜水艦の20%、攻撃型原子力潜水艦の30%、巡洋艦3隻以上、あるいはその他のさまざまな陸上の標的の破壊」が含まれていた。
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翻訳=溝口慈子

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