IEAの年次報告書によると、昨年の発電による炭素排出量は前年から4億1000万トン増加し、過去最高の374億トンとなった。再生可能エネルギーの利用が大幅に拡大したことで、炭素排出の年間増加量は2022年の4億9000万トンより縮小した。最も汚い化石燃料である石炭からの排出が、増加分の65%を占めた。
昨年は世界各地で異常な干ばつが発生したことで水力発電の発電量が不足し、それを埋め合わせるために米国や中国をはじめとする国々が化石燃料に頼ることになった。報告書は、この水力発電の不足がなければ、昨年の発電による炭素排出量は減少していただろうとみている。
インドと中国の新型コロナウイルス流行後の経済成長は「エネルギー集約型」で、昨年は雨不足により化石燃料への依存度が高まり、炭素排出量がそれぞれ1億9000万トンと5億6500万トン増加した。
2019~2023年の再生可能エネルギーの伸び率は、化石燃料の2倍だった。IEAは、この成長がなければ、世界の炭素排出量の増加は3倍になっていただろうと分析している。
IEAのファティ・ビロル事務局長は次のように述べた。「クリーンエネルギーへの移行は過去5年間に一連のストレステストを受け、回復力を実証してきた。新型コロナウイルスの世界的な流行やエネルギー危機、地政学的な不安定性はいずれも、環境に優しく安全なエネルギーシステムを構築する努力に水を差す可能性があった。ところが多くの経済圏では、その逆の現象が起きている」
過去10年間の世界の炭素排出量の増加率は年間約0.5%だ。これは1930年代の世界恐慌以来、最も小さい。先進国の炭素排出量は昨年約4.5%縮小し、50年前の水準となった。経済の停滞や不況の影響で炭素排出量が減少した過去の時代とは異なり、昨年は先進国の国内総生産(GDP)が1.7%拡大した中で炭素排出量の削減が実現した。
(forbes.com 原文)