経営・戦略

2024.03.04 09:30

日本にも進出済みの中国発オンライン証券会社「Webull」がSPAC上場へ

安井克至

Photo Illustration by Budrul Chukrut/SOPA Images/LightRocket via Getty Images

米国ロビンフッドの競合とされる中国資本の株式取引プラットフォームWebull(ウィブル)の運営元のWebull Corp.(ウィブル・コーポレーション)は、韓国のSKグループが設立した特別買収目的会社(SPAC)との合併を通じ、米ナスダックに上場しようとしている。

中国の湖南省を拠点とするウィブルは2月28日、同社の株式取引プラットフォームの価値を約73億ドル(約1010億円)と評価する取引で、SKのSPACであるSKグロース・オポチュニティーズと合併することに合意したと発表した。ウィブルは、SKグロースから約1億ドル(約150億円)を受け取る見込みで、この取引は規制当局と株主の承認を経て、今年の下半期に完了予定という。

「SKグロースとの経営統合は、当社にとって重要なマイルストーンとなる。SKのパートナーシップと経験は、ウィブルを世界の新世代の投資家に選ばれるプラットフォームにするという当社の長期的なビジョンに完全に合致している」とウィブルの創業者でCEOのワン・アンカン(Anquan Wang)は声明で述べた。

ウィブルは、中国のアリババとシャオミの元社員のワンが2016年に設立した企業だ。ブルームバーグによると、同社の親会社のFumi Technology(フミ・テクノロジー)は、2021年の調達ラウンドで非公開の投資家から1億5000万ドルを調達した際に10億ドル以上の評価を受けていた。フミ社の他の出資者には、シャオミの共同創業者のレイ・ジュンの投資会社のShunwei Capitalや、中国の資産管理会社ノア・ホールディングスが含まれる。

オンライン株取引サービスを提供するウィブルは、2018年に米国に進出し、手数料無料の取引を提供している。同社のプラットフォームは、2021年のミーム株のブームが起きた際に米国で注目を集め、ゲームストップやAMCエンターテインメントなどの株を求める個人投資家が殺到した。ウィブルは、2023年4月に日本でのサービスを開始し、他にもオーストラリア、カナダ、香港、メキシコ、シンガポールなどの世界15地域で3500万人の登録ユーザーを抱えている。

ブルームバーグは2021年に、同社が米国での新規株式公開(IPO)で3億ドルから4億ドルの調達を目指していると報じていた。SPACとの合併を通じた上場は、パンデミック時にウォール街で大流行したが、昨年からの一連の企業の倒産や株価の下落を受けてブームが終了し、ここ最近はごく稀なものとなっている。

SKグロース・オポチュニティーズは、設立当初はESG(環境・社会・ガバナンス)分野に焦点を当て、2022年6月のナスダックへの上場で約2億ドルを調達していた。

通信やメモリーチップ、電気自動車用バッテリーを主な事業とするSKグループは、以前にもフィンテック関連に投資しており、米国のイーサリアム関連技術開発企業でマイクロソフトやテマセク、ソフトバンクらが支援するConsensys(コンセンシス)や、韓国のモバイル金融サービスプロバイダーのFinnq(フィンク)などにも投資を行っていた。しかし、SKは2022年にフィンクの株式をハナ金融グループに売却した。

forbes.com 原文

編集=上田裕資

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