2024年シーズンの開幕に向けて1つ目立っていることを挙げれば、ドジャースが話題をほぼ独占していることだ。ここ数年、プレーオフで早々に敗退という辛酸をなめているドジャースは、昨年のオフシーズンに巨額の大型補強を次々に行った。地域スポーツ専門局の凋落をめぐる懸念から多くの球団が出費を手控えがちだったのと好対照だった。
といっても、ドジャースは強引に選手市場を支配したわけではなく、むしろ選手との契約で柔軟性を確保することでこれらの補強を進めた。
昨年のオフシーズンで目玉の契約はいうまでもなく、ドジャースが大谷翔平と結んだ10年7億ドル(約1050億円)という超大型契約だった。通常なら、これほどの金額の契約をした球団はほかの穴埋めや強化に年俸総額を配分するのに支障が出る。ところがドジャースは逆にこの契約などを通じて、ブランド力やそれにともなう収入があり、そして賢くあれば、ある程度柔軟に球団を運営できることを示してみせた。
大リーグ選手の年俸情報サイト「コッツ・ベースボール・コントラクツ」によると、ドジャースは大谷との契約で、球団の年俸総額が一定額を超えると課される「ぜいたく税」をうまく抑えられるようにしている。大谷の10年7億ドルという契約額は現在の価値を反映するように割り引くと、年俸を計算する場合は大リーグと選手会で決められている10%の利率が適用されて年およそ2800万ドル、ぜいたく税を算出する場合は4.43%の利率が適用されて年およそ4600万ドルとなる。
2024年から2033年までの間、大谷が年俸として受け取るのはたった200万ドルで、残りはすべて繰り延べられる。つまり、2034年から2043年まで毎年7月に6800万ドルが分割で後払いされる。巧妙なのは、繰り延べに利子がつかないという点だ。6800万ドルというのは現在のドルの価値で、将来のインフレ率は反映されない。
ドジャースは大谷だけでなく、ムーキー・ベッツやフレディ・フリーマン、テオスカー・ヘルナンデスとも繰り延べ方式の契約を結んでいる。