40%を下回ると言われる物流トラックの積載率と生産性の最大化を追求したこのシステムは、量子アルゴリズムを用いて荷物の割り付け、積み付けを自動化することで、手作業では約2時間要する作業を、40秒に短縮。荷姿や重量、温度帯が異なる荷物を最適に積み込むための組み合わせを瞬時に割り出し、同社が開発した大型トラック2.5台分の「ダブル連結トラック」で異業種の荷物を混載輸送します。
アサヒグループジャパン、日清食品ホールディングス、ブリヂストン、三菱UFJ銀行を含む19社が出資する同社は、フィジカルインターネットのエコシステムの実現に不可欠となる業界を超えた連携を強化し、異業種全42社とともに輸送シェアリングの仕組みづくりを進めています。
着荷主企業の連携
食料小売業界もいち早く物流改革に乗り出しています。九州、首都圏、北海道では、各地域の食品スーパー事業者が結集し、物流改善を図る研究会が発足。小売業の物流網では、大量の店舗をきめ細かく回ることから効率化のハードルが高いとされる中、競争ではなく協調を旗印に、大手スーパーが連携してサプライチェーンの商慣行の見直しを進めています。
具体的には、発注・納品リードタイムの延長や、製造から賞味期限までの期間のうち最初の3分の1を過ぎた商品を仕入れないとする従来のルールを2分の1へと緩和すること、輸送トラックの共同利用など。物流の効率化とフードロス削減に同時に対処する業界各社の足並みの揃ったこうした取り組みは、今後も拡大していく予定です。
モーダルシフト:排出量を削減しながら積載率を高める
長距離輸送手段をトラックから船舶または鉄道に切り替える「モーダルシフト」で、輸送効率を高める動きも広がりつつあります。昨年9月、武田薬品工業は三菱倉庫とJR貨物と連携し、医薬品輸送の一部をトラックから鉄道輸送へと切り替えました。温度管理可能な鉄道コンテナを使用し、医薬品の適正流通ガイドラインに準拠した輸送を実現した同社は、輸送ルートでの排出量を約60%削減する見込みです。また、日本製紙と大王製紙は、昨年8月にRORO船を使った共同輸送を開始。大王製紙が愛媛県の工場から首都圏に出荷した帰りの船に、日本製紙が福島県の工場から関西に出荷する貨物を千葉県から載せることで、排出量削減と積載率の向上を実現しています。
物流業界を革新する
世界経済フォーラムのレポート「ラストマイル・エコシステムの未来 (The Future of the Last-Mile Ecosystem)」によると、2019年から2030年までの間に、世界の上位100都市の道路を運行する配送車両の数は36%増加する見込みです。危機とも捉えられる「2024年問題」は、こうした物流需要の高まりに対応しながらも、ドライバーの労働環境の改善、環境負荷の低減、デジタルトランスフォーメーションを実現するまたとないチャンスです。官民連携、これまでの商慣行にとらわれない新たな発想、先端テクノロジーの導入が、持続可能でレジリエントな物流業界の未来を切り拓く鍵となるでしょう。
(この記事は、世界経済フォーラムのAgendaから転載したものです)
連載:世界が直面する課題の解決方法
過去記事はこちら>>