ウクライナ国防省は「12日間で13機のロシア軍機を破壊した」としている。内訳はSu-34が10機、Su-35戦闘機2機、ベリエフA-50早期警戒管制機1機だ。
10日かそこらで十数機の損失というのは、疲弊してきているロシア空軍にとって想像以上に深刻な事態だ。理屈としてはロシア空軍にはまだ多くの航空機があるということになる。だが実際は、ロシア空軍は危険なまでに崩壊に近づいている。
ウクライナ側がこれほど多くのロシア軍機をどのように撃墜してきたのかははっきりしないが、米国製のパトリオット地対空ミサイルシステムや冷戦期の古いS-200地対空ミサイルシステムなど複数の防空兵器を使っているらしい。また、ロシア側が前線付近への航空機の出撃回数を増やしていることも関係しているとみられる。
いずれにせよ、ウクライナ側による最近の大量撃墜がロシア側にもたらす結果は重大だ。ロシア空軍は耐えられる水準をはるかに上回るスピードで軍用機を失っている。ロシアの航空宇宙産業は国際的な制裁の影響で、新しい軍用機を年に25〜35機かそこらしか生産できていない。
現有機の損失の急激な拡大に新造機の生産停滞が重なり、ロシア空軍で生き残っている機体や搭乗員に対するストレスが高まっているのはほぼ確実だ。ロシア空軍は組織の崩壊に至る「死のスパイラル」にはまだ陥っていないものの、それに近づいている。
数字で見てみよう。文書上では、ロシア空軍には双発複座の超音速機であるSu-34が140機配備されているとされる。今年の未確認分も含めれば、ロシア空軍はうち三十数機をこれまでに失っている。
ということは、ロシア空軍には差し引き100機あまりというかなりの数のSu-34がまだ残っているのではないか?
米国のシンクタンク、ランド研究所のエンジニアであるマイケル・ボーナートによれば、そうではない。ボーナートは昨年8月の論考で、撃墜や墜落による損失はロシア軍機の「損失全体のごく一部」にすぎないと解説している。「戦争が長引くなかで、ロシア軍機には酷使による損失も出ている」からだ。
「一方の軍隊が他方の軍隊を消耗させようとする持久戦では、軍隊の総合的な耐久性が重要になる。ロシア空軍がいま置かれているのもそうした状況だ」とボーナートは指摘する。