迷走神経への刺激
ウェルネス産業に携わる人々の間では、迷走神経そのものとこの脳神経に少しの刺激を与えることが、いかに体の「闘争・逃走反応」をコントロールすることにつながるかということへの関心が大幅に高まっている。ヨガと瞑想の認定指導者であるケリー・スミスによると、脳と体を結びつける上で重要な役割を果たす迷走神経に刺激を与える方法には、深呼吸やマインドフルネス、さらには鼻歌や笑うことなど、簡単にできることも含まれる。
これらによって、交感神経系の働きによって引き起こされた闘争・逃走反応を落ち着かせ、気持ちを穏やかにできることが証明されているという。
没入型ASMR
ささやき声など、やさしい音でリラックスしたり、ゾクゾクしたりするような感覚を味わったことがあるというなら、あなたは聴覚から得られる「ASMR(自律感覚経絡反応)」を体験したことがあるということだ。米シェナンドーア大学のクレイグ・リチャード教授は「ASMRは2024年中に、ウェアラブル技術によって没入型で体験できるものになる」と予測している。
ASMR Universityの創設者でもあるリチャード教授(生理学)は、ASMRは2024年、さらにテクノロジー主導型となり、最大のウェルネストレンドの1つになると話している。
「何もしない」喜び
世界各地でスパとウェルネス・リゾートを運営するイタリアのQCテルメ・スパズ&リゾーツの共同創業者、アンドレア・クアドリオ・クルツィオは、2024年にみられるトレンドは、イタリアでいうところの「dolce far niente(ドルチェ・ファール・ニエンテ、甘美なる無為)」になると話す。「私たちは過度のストレスや過密なスケジュール、疲れ過ぎの状態に置かれ、喜ぶことや感嘆すること、あるいは制約を受けることなく自分のために何かをすることが、ほとんどできなくなっています。ですが、振り子の揺れ方は変わり始めたようです」
クルツィオは、ワークライフバランスの実現を目指す人が増えていることを指摘。これはイタリア人が得意とするところだとして「何もしないこと、脳もスケジュールも空っぽにすることが、真の感嘆とリラクゼーションを実現させるための第一歩です」と述べている。