欧州

2024.02.29 12:00

ウクライナ軍、ドニプロ川左岸でじわじわと前進 国旗の掲揚合戦も

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昨年12月から今年2月23日までに、ロシア側がクリンキを奪い返そうとして失った車両などの装備は222点にのぼる。それには、ロシアがこれまでウクライナで失った戦車およそ2600両を補うために、長期保管していた倉庫から引っ張り出した60年前の古いT-62戦車なども含まれる。
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一方、ウクライナ側の損失数は47点にとどまっている。ドニプロ川左岸にいる海兵たちは主に徒歩で戦っており、失った装備の多くは右岸に配備されていた榴弾砲だ。いずれにせよ、この偏った損失率は、ウクライナ南部に配置され、ウクライナ側よりもはるかに大規模なロシア軍部隊の無秩序ぶりと、クリンキに張り付いているウクライナの海兵たちの並外れた勇敢さを物語っている。

ロシアがウクライナで拡大して3年目に入った戦争のおよそ1000kmにおよぶ前線で、クリンキ方面はウクライナ側に勢いがある唯一の戦域となっている。そのため、クリンキはプロパガンダ上の価値がきわめて高い。

ロシアのセルゲイ・ショイグ国防相が先週、ロシア軍が橋頭堡を掃討したと虚偽の報告をしたのもそのためだ。また、ロシア側もウクライナ側も一帯で国旗を立てることに高い価値を見いだしているのも同じ理由からだ。
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ある通りや区画の支配を示すものとして、国旗には非常に強いメッセージ性がある。2月13日、恐れ知らずのウクライナ海兵がクリンキ西部の給水塔によじ登り、その上にウクライナ国旗を掲揚した。1週間後の20日には、今度はロシア兵2人がクリンキ東部まで命懸けで120mほど突っ走り、ロシア国旗を掲げている

だが、ロシア兵らが国旗を立てたのと同じ日、ウクライナ南部作戦コマンド(統合司令部)のナタリヤ・フメニュク報道官は記者会見で、クリンキの海兵隊部隊は「引き続き橋頭堡を強化し、その拡大に取り組んでいる」と語っている

ロシアの戦争特派員「ロマノフ」によれば、1週間後、クリンキの海兵隊部隊はコザチラヘリの方向へ短い距離だが前進した。「安定した防御がされている前線はない」とロマノフは書いている

forbes.com 原文

翻訳・編集=江戸伸禎

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