弘前大学の佐々木一哉教授を中心とする研究グループは、かん水、地下水、使用済みリチウムイオン電池などから高純度なリチウムを高速に回収できる新技術を開発した。隔膜を挟んだ槽の電位ポテンシャル差を利用して、特定のイオンだけを移動させる電気化学ポンピング技術を使ったリチウム回収方法だ。原理的には「不純物イオンをまったく含まない極めて高純度なリチウムを無限に大きな速度で回収できる」ことが示されたとのこと。
現在、リチウムの生産国はチリ、中国、オーストラリア、アルゼンチンにほぼ限られている。リチウムの採取には、塩湖の水の濃度を高めて回収する方法と、リチウム鉱石から回収する方法とがあるが、塩湖が集中する南米大陸南部のリチウム資源量は全体の6割ほどを占める。特定の国に資源が集中していることは安全保障上問題であり、とくに中国や昨年リチウム産業の国有化を決めたチリとの取引の先行き不安から、各国は調達先や生産方法の多様化を進めている。
また塩湖方式では、ポンプで汲み上げた「かん水」を天日蒸発で濃縮するための広大な人工池を作る必要があり、さまざまな環境破壊問題や原住民とのトラブルもある。この新方式を使えば、地熱発電で汲み上げた地下水や海水、回収したリチウムイオン電池からも効率的にリチウムが回収できる可能性もあり、これらの問題の改善が期待される。弘前大学は、EUで導入される欧州電池規則によるリチウム資源リサイクル義務化に合わせて、この技術をすでに実用化研究の段階に進めているとのことだ。
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