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2024.03.01

机上の空論ではない。中小企業に実効性ある生産性向上施策を提案

コロナ禍が落ち着き、全国的に工場の稼働率が上がってきているが、中小企業の生産現場にはまだまだ課題が多い。独立行政法人中小企業基盤整備機構は、「生産工程スマート化診断」でその問題点を分析し、実効性のある生産性向上施策を提案する。同九州本部のキーパーソンたちに、事例を交えながらスマート化診断の要諦について話を聞いた。


中小企業の活性化が日本経済浮上のカギ

「現在、中小製造業で大きな問題になっているのは、人材不足・高齢化と人材採用難です。生産量を増やしたいときに人を確保するのが非常に難しくなっています」

独立行政法人中小企業基盤整備機構(中小機構)九州本部シニア中小企業アドバイザーの三戸宏昭は、危機感をあらわにする。そこで求められるのが生産の効率化だが、それも思うように進んでいないのが現状だという。

「生産を自動化するには、モノがどこにあり、どのように運搬し、どのような手順でロボットに取り付け、加工や組み立てをするか、ということが明確になっている、整然とした「モノと情報の流れ」が必要です。ところが多くの中小企業の現場では、5S(「整理」、「整頓」、「清掃」、「清潔」、「躾(しつけ)」)がまだまだ徹底されておらず、モノと情報の流れが見えにくい状況にあるのです」(三戸)

こうした中小企業の課題解決を支援するのが中小機構だ。中小企業政策は、経済産業省中小企業庁が立案しているが、その施策を実行するのが同機構だ。九州本部の金子英里子が説明する。

「商工会議所・商工会、よろず支援拠点、中小企業団体中央会、日本政策金融公庫・商工中金など多くの支援機関が中小企業を支援していますが、中小機構はこれらの機関と連携しながら、中小企業の成長に向けた取り組みをサポートしています」

中小企業の成長こそが、日本経済浮上のカギになると金子は力を込める。

「中小企業は日本の全企業の99.7%を占め、労働者の約7割が中小企業で働いています。中小企業のサポートをしていくことが、日本経済全体の成長につながると信じて、私たちはさまざまな支援施策を展開しています」

三戸も自動車や電機の大手企業に勤めてきた経験から、中小企業支援の意義を強調する。

「製品を構成するさまざまな部品のすべてを大企業がつくることはなく、多くの部品を中小企業がつくり、大企業の生産を支えています。その部分の生産性が向上して働く人たちのモチベーションが上がり、中小企業が活性化することは、日本経済にとってかなり大きなメリットになるはずです」

中小企業が生産性を上げ、利益率を上げていくために検討すべき課題のひとつが「自動機やロボット導入による自動化・省人化」である。しかしながら、「自動化・ロボット導入を実施したいが、どこから手を付けてよいかわからない」という中小企業もまだまだ多い。そこで中小機構は、2021年度より無料の支援施策として、「生産工程スマート化診断」を開始した。生産性向上の課題を抱える中小企業に対し、製造現場での経験豊富な専門家が3回の支援を通じて生産性向上に資する提案を行う。
「生産工程スマート化診断」の概要

「生産工程スマート化診断」の概要

初回は3時間ほどかけて製造現場を観察し、経営者や工場長からヒアリングを行う。その結果から仮説を立て、2回目の支援で経営者らとディスカッションを行い、改善の方向性について合意を得る。そして、3回目に実効性のある具体的なソリューションを提案するのだ。その要諦を中小企業アドバイザーの伊藤浩文が説明する。

「その企業が抱えるボトルネックは、経営者との話や工場の状態を見ると、ある程度わかります。仮説を提示して経営者の反応を聞きながら、その会社はどういう問題を抱え、どの部分に手を打たなければならないのかを判断します。最初から自動化ありきではなく、課題を整理し、具体的な解決方法を提案する。スマート化診断と言いながらも、会社全般のものづくりにおける中期戦略を意識しながら提案をしています」

一口に製造業と言っても、食品加工もあれば金属加工もあり、生産している製品はさまざまだ。しかし伊藤に言わせれば、中小企業が抱える課題は似通っている。

「ひとつ例をとると、設備の稼働状況を見える化しようとSIerに勧められるままにIoTの設備を入れる企業がありますが、導入自体が目的になってしまい、その先に何があるのかをわかっておられない人が多い。どういうプロセスで見える化し、それをどう経営改善に生かすかがとても重要なのですが、そこが抜け落ちてしまっているのです。私たちは、あるべき姿に気づいてもらうような提案を心がけています」

リアルタイムにトレーサビリティを確保

経営者が提案に納得したらそれを自ら実行へ移していくわけだが、実装に際し、中小機構がハンズオン支援でフォローした事例もある。生産工程スマート化診断から実装までは、どのように行われているのだろうか。ここからは、2社の事例を紹介したい。

まずは、宮崎県延岡市に本社工場を構える吉玉精鍍株式会社だ。めっき加工を手がける同社は、特に品質に対する要求が厳しい自動車業界に多くの部品を供給しているが、顧客より完成品全数の外観検査を求められていた。めっきの品質を維持することは非常に難しく、素材、めっき浴、設備など厳しく管理を行っても突発的な不具合が発生することがある。不具合に対してはその都度、再発防止の対策を行うが、その管理方法はまさしくアナログ的な方法で、現場のノウハウをもった熟練技術者で対応せざるを得ない状況にあった。

「品質不良が出たときにロットを限定する目的でトレーサビリティを確保しようとはしていましたが、製造情報を記録した紙をファイルに綴じるやり方だったため、取引先からデータの提出を求められた際1日かけて探し出すなど、非常に非効率でした」(伊藤)

伊藤はまず、それらをデータベース化する提案をした。

「トレーサビリティを確保するためだけでなく、過去から現在のデータを活用してものづくりを最適化する「製造のDX化」を提案しました。記録するデータの種類は経験的に決められていましたが、そもそも今取っているデータ自体が必要なものなのかといった議論からはじめ、工程がどうあるべきか、どういったデータをどういう形で取得するかという条件出しまでを検討しました。生産活動におけるさまざまなデータをリアルタイムで見える化し、維持管理を行う。さらには、問題が発生した場合にデータから原因を探り、素早く対策することによって不良を発生させない、データ活用の仕組みづくりを目指しました。」

その提案をもとに吉玉精鍍はデジタルツールを導入。リアルタイムでトレーサビリティを確保できる体制の構築を中小機構が引き続きサポートしている。工程管理と品質の情報を一元化し、データ解析を素早く行える体制を整え、高稼働の生産を実現することが狙いだ。

経営者の希望もあり、伊藤は自動外観検査装置による全数検査も提案していたが、現実的でないことがわかった。

「1つの製品だけで1日の生産量が900万個に達することもあり、その生産量に対応すると設備コストが跳ね上がってしまうのです。そこで現在行っている2期目の支援では、品質工学を用いて洗浄工程の不良や外観不良の撲滅に取り組み、品質ロス・コストの削減を図っています」

さらに今後の支援では、トレーサビリティシステムの活用による開発プロセスの革新、生産計画と実績の見える化を後押しし、企業のさらなる収益向上をサポートするという。吉玉精鍍株式会社のプロジェクトメンバー

吉玉精鍍株式会社のプロジェクトメンバー

スマート化の前に基本となる5S3定を徹底

2社目は、鹿児島県霧島市に本社工場を構える福山黒酢株式会社だ。黒酢を製造販売している同社の工場は、学校の廃校舎を利用しているため、手狭で作業空間が細長く、効率的な生産ができていなかった。原料や資材の在庫切れが頻繁に発生し、そのたびに生産がストップしていたのだ。そこで中小機構がまず提案したのは5S3定の徹底だ。

「同社の製品は多品種少量生産であるため、いろいろな資材があちこちに置いてあり、探すのに非常に時間がかかるという問題がありました。まずは5S3定を徹底し、倉庫における商品・資材の入出庫作業やピックアップ作業管理の課題を整理したうえで、何がどこにあるかがすぐにわかる新たな在庫管理の仕組みを提案しました」(伊藤)

5S3定を実践することにより、工場内がみるみるうちに綺麗になり、それだけでも生産性が大幅に向上したという。そうした基本を押さえたうえで、中小機構はスマート化を提案した。

「在庫管理の仕組みづくりのため、在庫・棚卸・発注業務を自動一括管理するシステムの導入を提案しました。さらには充填機のボトル取り出しから打栓機への連結や、多品種のボトルに対応した充填・打栓機導入といった充填工程の自動化を提案しました」(同)

ハンズオン支援では、資材の在庫管理のシステム化に取り組んだ結果、欠品のアラートにより発注漏れによる欠品がなくなり生産性が大幅に向上したという。現在は充填・打栓機の導入を検討中だ。
福山黒酢株式会社のプロジェクトメンバー

福山黒酢株式会社のプロジェクトメンバー

生産工程スマート化診断により、中小企業に実効性のある支援を続ける中小機構。金子は、企業と二人三脚で課題解決に取り組んでいきたいと強調する。

「スマート化診断後は、設備などの導入までにさまざまな取り組むべきテーマが出てくるので、中小機構としては診断だけで終わることなく、実装に向けて企業と一緒になって一つひとつの課題を解決していきたいと考えています」

一方、三戸は生産工程にとどまらず、企業のニーズに合わせた支援をしていきたいと意気込む。

「生産工程のスマート化は生産性を上げ、省人化につなげる手段のひとつですが、企業が抱える課題はそれだけにとどまらず、生産管理の仕組みづくりや原価の見える化、物流、人事制度構築、事業計画の立案など、非常に多岐にわたります。その企業にとっていま何が重要かを探り、企業に合った最適な支援をすることが私たちの使命です」

生産工程スマート化診断を足がかりに、中小機構は中小企業の生産性向上をあらゆる方面から支援し、日本経済の成長に貢献する。
中小機構九州本部でハンズオン支援に携わるメンバー。事務所を移転し、気分も新たに企業支援に取り組む。

中小機構九州本部でハンズオン支援に携わるメンバー。事務所を移転し、気分も新たに企業支援に取り組む。



中小機構 生産工程スマート化診断
https://www.smrj.go.jp/sme/enhancement/smart/index.html


三戸宏昭(みと・ひろあき)◎いすゞ自動車㈱でエンジンの工法企画/生産ラインの企画・量産展開後、九州松下電器(現パナソニック コネクト)に入社。国内外の工場建設・工場運営・業務改革を担当。2021年より中小機構九州本部のシニア中小企業アドバイザーとしてハンズオン支援事業の実務全般を統括。

伊藤浩文(いとう・ひろふみ)◎セイコーエプソンでPCの開発に携わり、その後九州松下電器(現パナソニックインダストリー)に入社。デバイスの商品開発、生産技術、製造を担当。2020年より中小機構九州本部の中小企業アドバイザーとして、生産性、品質、原価改善をベースにおいた中小企業支援に従事。

金子英里子(かねこ・えりこ)◎2002年中小機構の前身である地域振興整備公団に入団。04年中小機構設立後は、まちづくり支援や中小企業大学校での研修企画に携わり、12年より九州本部勤務。着任後は主に新事業創出支援に従事し、20年4月よりハンズオン支援事業や生産工程スマート化診断を担当。中小企業診断士。

Promoted by 中小企業基盤整備機構 │ text by Fumihiko Ohashi │ edited by Akio Takashiro