欧州

2024.02.27 13:00

有能なCV90歩兵戦闘車、北欧2カ国がウクライナ向けに最新型生産へ

CV9035NL歩兵戦闘車。2021年10月、リトアニアのパブラデで(Karolis Kavolelis / Shutterstock.com)

CV9035NL歩兵戦闘車。2021年10月、リトアニアのパブラデで(Karolis Kavolelis / Shutterstock.com)

スウェーデンとデンマークはウクライナ向けにCV90歩兵戦闘車の改修型を35両共同で生産する見込みだ。デンマークが資金を拠出し、スウェーデンが製造する。

生産されるCV9035NL就役中近代化(MLU)型は、オランダに納入されているものと同じタイプになる。CV90は重量37t、乗員3人のほか兵員最大8人が乗り込める装軌式の歩兵戦闘車だ。価格はおよそ900万ドル(約13億6000万円)とされる。

CV9035NL MLUはウクライナ軍の歩兵戦闘車で唯一、車長用の安定化サーマルビジョン(熱赤外線可視化)システムを搭載した車両になるとみられる。これは重要な点である。とはいえ、このCV90のハイテク機能はそれだけではない。

CV9035NL MLUの車長用照準装置は第3世代のサーマルビジョンシステムとレーザー測距儀を備え、測距儀は最長約9.7kmまで計測できる。さらに、砲手用にもレーザー測距儀付きの第3世代サーマルビジョンシステムがある。つまり、車長と砲手はそれぞれ独立して、昼夜を問わず、高解像度で目標を探すことができるのだ。

CV9035NL MLUには、敵車両から距離の計測やミサイル誘導のためにレーザー波を照射されると乗員に警告を発する警戒システムも搭載されている。乗員はそのおかげで、発煙弾の発射や制圧射撃などで対応できる。

オランダ向けのCV90では防御力を高めるために、イスラエルで開発されたアクティブ防護システム「アイアンフィスト」がスウェーデンの車両メーカー、BAEシステムズ・ヘグルンドによって追加されている。アイアンフィストは敵のミサイルや通常弾を探知し、小さな飛翔体を発射して迎撃するシステムだ。ただ、これがウクライナ向けのCV90にも搭載されるのかは不明だ。

地雷攻撃による衝撃から乗員と兵員を守るために、CV90の座席は上部と側面に固定されている。内部は金属片で負傷しにくくなるようにスポールライナー(飛散防止の内張り)も施されている。新型CV90は砲塔の複合装甲も新しくなっているが、素材や組み合わせなどの詳細は公表されていない。

ウクライナはすでにスウェーデンから旧型のCV9040を少なくとも50両受け取っている。CV9040の主砲はボフォース40mm機関砲だが、CV9035NL MLUではブッシュマスターIII35mm機関砲に変更されている。

ブッシュマスターは徹甲弾、破片弾、サボ弾(装弾筒[サボ]を付けて貫通力を高めた砲弾)を発射できる。いずれにせよ、砲弾がより小型なため装填数を増やせる点が最大のメリットだ。

CV9035NL MLUは砲塔の右側に、射程約4.8kmのイスラエル製スパイクLR対戦車ミサイル2発の発射機も装備する。スパイクLRは防護の弱い戦車上部をたたくトップアタック攻撃ができるほか、発射後にミサイル自体が目標を追尾するため、砲手らによる誘導が不要な「撃ちっ放し」能力も持つ。

ウクライナ軍の米国製M2ブラッドレー歩兵戦闘車に搭載されているTOW対戦車ミサイルにはこの能力がない。そのため、TOWを発射したあとM2はその場にとどまり、乗員がミサイルの飛翔中、誘導を続ける必要がある。対してCV90は、停車してスパイクLRを発射後、即座にその場を離れることができる。

ウクライナ軍の現有の旧型CV90でスパイクLRが使われたことはなく、ウクライナへ新たに供与される新型にこのミサイルが搭載されるのかも不明だ。

ともあれ、高性能な照準装置や装甲を備え、重武装のCV9035NL MLUは、ロシアがウクライナで拡大した戦争で使われる歩兵戦闘車としては最先端のものになりそうだ。ウクライナ軍で来年にも就役する可能性がある。

forbes.com 原文

翻訳・編集=江戸伸禎

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