MCOが抱えるもう一つの課題は、クラブ間の最適な連携を見いだすことだ。MCOには戦略的意思決定や選手のスカウトを一元管理できる大きなメリットがあるが、各クラブがそれぞれの状況に応じて動ける機敏性を十分に維持しておくことも重要だ。
とはいえ、適切に運用した場合、MCOがもたらす利益は計り知れない。
シリアノスによると、シリアノスによれば、プレミアリーグの選手の移籍金や年俸は平均4000万~5000万ドル(約60億~75億円)に上るが、ポルトガルやベルギーのクラブならそれより安く、ときには1000万ドル(約15億円)足らずで買収できる。MCOならば、非欧州圏のトップ選手3人に手頃な投資をしてグループ内で明確なキャリアパスを提示し、ベルギーやポルトガルのクラブでプレミアリーグ水準まで育成することが可能だ。
ニッチを見いだし、過小評価されていた選手の発掘に成功したクラブの代表例として、シリアノスはプレミアリーグのブライトン・アンド・ホーヴ・アルビオンを挙げる。ベルギーのロイヤル・ユニオン・サンジロワーズとの関係を活用して、MF三笘薫のような才能ある選手を育成してきた。
MCOとして投資対効果を最大化するカギは、ほかのクラブよりも優れた「選手評価と選手育成のモデル」を確立することだとシリアノスは指摘する。欧州ではクラブの評価額が頭打ちになっている可能性があるものの、賢明なオーナーや投資家が探究すべき機会はまだ豊富にあるという。
アフリカや南米は、MCOが拡大する次のフロンティアになり得る。とりわけブラジルは、才能ある選手の宝庫であるだけでなく、多大なビジネスチャンスをもたらすことが期待されている。
だが、単にMCOに組み込むだけでは不十分だ。それぞれのクラブに最大限の利益をもたらせるような、適切な構造をMCOが有しているかどうかが重要になる。
(forbes.com 原文)