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2024.03.01

サッカーのマルチクラブ・オーナーシップ、その莫大な利点と課題

Getty Images

英マンチェスター・シティやJリーグの横浜F・マリノスなどが属するシティ・フットボール・グループ(CFG)から、レッドブル・グループまで、複数のサッカークラブを一つの経営母体が保有・運営する「マルチクラブ・オーナーシップ(MCO)」がピッチ上で成功をもたらすことは実証済みだ。サッカー事業に進出するプライベートエクイティファンドが増えるなか、MCOはより一般的なクラブ運営形態となる可能性がある。

MCOはピッチ上のパフォーマンスだけでなく、ピッチの外のクラブ運営の効率をも向上させる可能性を秘めている。サッカー業界に特化した戦略分析コンサルタント企業Fenidaの創業者、ジョージ・シリアノス最高経営責任者(CEO)によれば、業界にはいまだに「収益化可能な非効率性」が存在し、活用すればクラブは容易に利益を上げられるという。

シリアノスは現在イングランド・プレミアリーグのノッティンガム・フォレストの理事会顧問を務めている。クラブオーナーのエヴァンゲロス・マリナキスは、ギリシャの強豪オリンピアコスも所有し、さらにポルトガルの「リオ・アヴェ」の買収にも動いている。

MCOにより、オーナーは「異なる市場に投資を分散させ、選手獲得、スポンサーシップ、ブランディングの機会のシナジー効果を利用できる」とシリアノスは説明する。だが、MCOの最も興味深い点は、選手のスカウト活動を総合的に管理し、その過程で付加価値を生み出せることだ。

シリアノスによれば、MCOの中でもレッドブル・グループはやや特殊だ。オーストリア、ドイツ、米国、ブラジルにクラブを所有するレッドブルは「おおむねゼロからクラブをつくり上げている」ため、アイデンティティー形成を主軸とする傾向が強く、「選手育成とスカウトのシステム全体を効果的に標準化している」という。

一方、ほかのMCOは、それぞれ独自のカルチャーと伝統を有する複数の老舗クラブで構成されており、各クラブの歴史や伝統、競合する利害を尊重しつつ、全体のバランスをとることが最大の課題となる。

そのため、透明性の高いコミュニケーションはもちろん、「グループ傘下の各クラブが野心を持ち続けられるようにすることが不可欠だ」とシリアノスは言う。選手たちがより高いレベルで競い合い、成長を続けること、それにより傘下の各クラブのファンが「ベストな状態のチームを観戦できる」ことが何よりも重要だからだ。
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翻訳=的場知之/ガリレオ

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