最高級のツナ缶が認知度を上げた
売り上げが目標ではなく、技術を駆使した最高級のツナ缶を残したいという思いで作ったものだったが、意外な効果を生み出した。1缶5000円というものにどんな価値があるのかと、メディアがこぞって取り上げ始めたのだ。「テレビや雑誌などで紹介され始め、あっという間に初回の分は完売しました。さらには、他のツナ缶の販売数もどんどん伸びていったんです。『BLACK LABEL』を『日本一贅沢なツナ缶ブランド』と言ってもらえた結果、モンマルシェという会社が作るものは、品質がいいという認知が広まったんだと確信しました」
モンマルシェでは、「BLACK LABEL」を作る前から、既存のツナ缶のラインがあった。そちらもBLACK LABELほどではないものの、同じようにびん長まぐろや漬け油にこだわった商品で、1缶あたり500円以上するもの。一般的なツナ缶より、はるかに高い。
「高いけれど、いいものという認知が広まれば、売り上げが伸びるということが証明できました。上質な一品だし、贈り物にもいいとなれば買っていただける。この価格だけの価値があると思っていただけるんだな、と」
河野さんがここまで自信を持って品質がいいと言い切れるのには、モンマルシェという会社の信念があってのことだ。商品開発において、決まった売価に対してコストを下げるという考え方はしていないと言い切る。
「いいものを作ってから、売価を設定していくという流れ。そうすると、卸をするだけの余裕がなくなりますが、それでもいいという会社です。商品を研究する人間はやりがいを感じるし、販売する人間も後ろめたい気持ちがなく、自信を持っておすすめできる。そういう環境にしています」
商品を開発し、作って、売るということに健全でありたいという姿勢を貫いているのだ。
魚の次は、野菜を簡単に食べられるように
もうひとつ、うちの主力商品があるんですと、営業部の遠藤さんが見せてくれたのが「野菜をMOTTO」シリーズ。国産の野菜だけを使ったもので、うま味調味料や着色料・保存料は不使用。さらにレンジで1分加熱するだけで完成するというレトルトスープだ。「ツナ缶は魚を簡単においしく食べる方法で、売り上げが伸びていきました。次は野菜を簡単においしく食べられる商品を作ろうということで、スープを開発したんです」と話す遠藤さんに、河野さんが続ける。
「野菜不足を解決すると同時に、国産野菜のおいしさを伝える商品にしたいという思いが強くありました。たとえば、里芋には、親芋、小芋、孫芋とあって、私たちが普段食べているのは孫芋です。地元の農家さんに聞いたところ、親芋は孫芋と味は変わらないけれど、食感が良くないということで市場に出回らないそうなんです。それなら、親芋をスープにすれば使えるわけです」