食&酒

2024.03.03 15:00

マラソンは黄金の卵|山中伸弥教授×小山薫堂スペシャル対談(前編)

Forbes JAPAN編集部
山中:そうなんです。小山さんは何か人生がガラリと変わった経験はありますか。

小山:第一志望だった防衛大学校の試験に落ちたことです(笑)。父が「これから国を守るという仕事が大事な時代になる」と。でも、僕に勧めたいちばんの理由は学費がタダだったことなんですよ。「合格したら好きなもん買ってやる」と言われ、僕も「じゃあ、ソアラ買って」という感じで。

山中:(笑)。憧れの車でしたよね。

小山:高校3年生のときに熊本市のトヨタの販売店まで行ってカタログをもらい、色まで決めていたのに、見事に落ちました。それでどうしようかと思ったら、学生寮の友人が映画監督志望で日本大学芸術学部の映画学科を受験予定だったんですけど、それ以外の学科の願書をくれたんです。そのなかに放送学科というのがあって、どうやらテレビをつくるらしいとわかったので、受けました。

山中:それでいまではテレビから映画から、果ては地方自治体や国と仕事をされるまでに。でも、とにかくお互い、父親の影響は大きかったというわけですね。

研究者にマラソン愛好家が多い理由

小山:山中先生といえば「マラソン」というか、人生にとってマラソンが大きな比重を占めているように思いますが、これほど夢中になった理由は何ですか。

山中:学生時代は1500mとか10kmなどは結構速かった。でもマラソンを走ったときに35km過ぎるとバテちゃって、走れないわ、苦しいわと地獄を見て。絶対二度とやらないと思っていたんですが、2011年10月、49歳のときに大阪マラソンが始まったんですよ。せっかく地元だし、40代最後の節目に1回だけ走ってもいいかなと思ったのが、運の尽きでした(笑)。

小山:ハマったんですね。

山中:もう十数年経ちますが、30回以上は走っています。今日もアメリカから戻って、すでに10km走ってきました。

小山:どこで走ったんですか。

山中:皇居の周りを。2月4日開催の別府大分毎日マラソンに向けて、必死に練習しています。

小山:もうやめようと思うことはないんですか。ゴルフの前とかだとワクワクするけど、マラソンの前って憂鬱にしかならない気がして。どういう気分なんですか。

山中:マラソンの前は食事も気をつけるし、お酒もちょっと控えたり。あと、風邪ひいたらどうしようとか。でも61歳にもなって、子どものころと同じような緊張感を味わえるのは、ある意味幸せなことだなと。

小山:いまも緊張されるんですか。

山中:します。ちゃんと走れるかなと。10km、20kmだったら何があっても走れると思うのですが、42kmというのは走ってみないとわからないんです。その日の朝起きて、今日は体調いいなと思っても、実際に走ってみたら途中でガクッとなったり、逆にちょっと体調悪いなと思ったのに、走ったらやたら元気なこともあったり。それに走ると、ああ、一仕事終わったみたいな。ビールも美味しいですしね。

小山:子どもと同じワクワク感や緊張感があるというのは本当にいいですね。

山中:はい、楽しんでいます。
次ページ > 京都マラソンでクラウドファンディング

写真=金 洋秀

この記事は 「Forbes JAPAN 2024年3月号」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

ForbesBrandVoice

人気記事