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2024.02.26 12:00

スペースXは台湾に衛星通信を提供せよ、米議員団がマスクに要求

中国事業を重視するマスクは反発

この問題は、中国による台湾侵攻の脅威が高まる中で、より差し迫ったものになっている。台湾の国家通信委員会は、昨年2月、中国の船が2本の海底ケーブルを切断したと非難した。また、それと同じタイミングで、CIAのウィリアム・バーンズ長官は、習近平国家主席が人民解放軍に対し、2027年までに台湾侵攻に備えるように命じたと発言した。そして1月の総統選で、台湾の自治権を主張する与党・民進党の頼清徳(ウィリアム・ライ)議員が勝利して以来、中国は軍事行動を活発化させており、専門家はさらなるサイバー攻撃を警告している。

2019年にスペースXとの協議を開始した台湾政府は当初、海底ケーブルに依存しない通信を確保できることを期待していた。しかし、台湾で事業を行う通信会社は、株式の過半数を台湾政府が保有することが義務付けられており、その条件をめぐる交渉はすぐに決裂した。マスクは、台湾でのスターリンク事業の完全な所有権を主張しており、要件の免除もしくは変更を要求した。それ以来、交渉は停滞したままで、台湾は独自の衛星システムの開発に着手している。

一方、スターリンクは台湾の通信の脆弱性を解決するツールの1つではあるが、過度な期待は禁物だと考える人もいる。「スターリンクとスターシールドは重要な役割を果たすだろうが、衛星通信に特定の障害が存在するのは避けたい」と元下院議員のウィル・ハードはフォーブスに語った。

台湾は、マスクの中国との深いつながりを警戒し続けており、彼の親中的な発言にも苛立っている。テスラの売上高の約20%は中国からのもので、2022年以降の車両の半分以が上海のギガファクトリーで製造されている。マスクは、昨年9月に台湾が「中国の不可欠な一部」だと発言したが、これを受けて台湾のジョセフ・ウー外相は「よく聞け、台湾は中国の一部ではないし、売り物でもない!」と公然と彼を非難した。

気まぐれなマスクが、議員の圧力に屈して台湾でスターシールドを稼働させる見込みは薄い。彼は過去にウクライナの紛争地域でのスターリンクへのアクセスを制限したことがあるが、その際に彼は「重大な戦争行為や紛争の激化に関与したくない」と述べていた。しかし、スペースXの米政府との軍事契約の重要性を考えると、彼は選択を迫られることになる。

ギャラガー議員は、23日の電話会見で記者団に「中国の目標は明確だ。彼らは台湾を統合するために必要があれば、武力を行使するだろう」と語った。「そのような状況下でスペースXとスターシールドが台湾にサービスを提供しないという報道は、さらなる懸念を高めている」とギャラガー議員は続けた。

forbes.com 原文

編集=上田裕資

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