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2024.02.26

スペースXは台湾に衛星通信を提供せよ、米議員団がマスクに要求

イーロン・マスク(Shutterstock.com)

米国の議員らがイーロン・マスクに対し、スペースXの国防用の衛星通信ネットワークStarshield(スターシールド)を台湾に駐留する米軍に提供するよう求めている。

フォーブスが入手したマスクに宛てた書簡の中で、共和党のマイク・ギャラガー議員は、スペースXが国防総省(ペンタゴン)に衛星インターネットサービスを提供する契約上の義務を負っていると指摘した。議員は、ペンタゴンがスターシールドに、今後の1年間で「数千万ドル」を支払うと述べている。

米議会下院の「米国と中国共産党の戦略的競争に関する特別委員会」で委員長を務めるギャラガー議員は、2月24日付の書簡の中で「私は、スペースXが台湾とその周辺におけるインターネットサービスの提供を差し控えていると理解しているが、この事は同社が米国政府と結んだ契約上の義務に違反している」と述べている。

「台湾とその周辺にいる米軍のための強固な通信ネットワークは、インド太平洋地域における米国の利益を守るために非常に重要だ」と同議員は指摘し「中国が台湾を侵略した場合に、米軍兵士は深刻な危険にさらされる」と付け加えた。この書簡は、マスクが委員会に対し、3月8日までに台湾とその周辺でのスターシールドの利用の可能性について説明を行うことを求めている。

マスクにとってこの要求が不愉快なものであることは明白だ。テスラは、同社の主要製造工場を置く中国と緊密な関係にあり、彼は中国が自国の領土と主張する台湾と中国と緊張関係に公然と口を挟んできた。2022年にマスクは、中台間の緊張は「台湾が統治権を譲ることで解決できる」との見解を示し、台湾の怒りを買っていた。

ギャラガー議員の書簡はまた、スペースXへの米政府の信頼が揺らいでいることを強調した。紛争地域にインターネットのアクセスを提供する同社のサービスは、ロシアと戦うウクライナ軍にとっても極めて重要だ。しかし、ウクライナの当局者は最近、ロシア軍がスペースXの衛星インターネット端末を使用しており、戦場でのウクライナの優位性が損なわれていると主張した。

ギャラガー議員は22日、議員団とともに台湾を訪れ、蔡英文総統を含む政府高官と会談し、中国が台湾の海底ケーブルを切断した場合に備えるための、スターシールドのような通信システムの必要性について協議した。

台湾の元議員で、現在はハーバード・ケネディ・スクールのフェローであるジェイソン・シューは、フォーブスの取材に「我々は議会を通じて、米国防総省に議会でこの問題を優先するよう働きかけている。台湾の海底ケーブルのインフラは危険にさらされており、衛星の能力を優先する必要がある」と語った。

スペースXは、フォーブスのコメント要請に応じなかった。
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編集=上田裕資

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