人口減少や高齢化の問題は中国に限ったことではなく、他の多くの国々も直面している。しかし、中国ではその数字が際立っている。労働力が減少しているだけでなく、中国の人口自体も減っているのだ。これまで人口を抑制する政策に多大な資源を投入してきた中国政府は今、出産を促すことがいかに難しいかに気付き始めた。国民が豊かになり、先細りとはいえ経済成長が続いている社会の変化の中で、子どもは少なくてもいい、あるいはまったくいなくてもいいと考える人が増えている。
中国にとって良いことは、これが潜在的な問題だと認識していることだ。最近では、中国共産党の女性党員から構成される中華全国婦人連合会が5年ごとに開催する全国女性代表大会で、この問題が公に議論されるようになった。出生率を巡る問題について、同国がこれほどのレベルで公に扱ったのは初めてだと言えるだろう。
逆に、中国にとって悪いことを挙げるとすれば、政府の対応が、少なくとも当初は問題を悪化させるかもしれないということだ。習近平国家主席は中国女性代表大会で演説をしたものの、若い母親を支援するための経済刺激策や、柔軟な休暇制度や託児所といった家庭に優しい職場環境の必要性には焦点を当てず、単に出産奨励の言葉を述べただけだった。同主席は「私たちは新たなスタイルの結婚や出産文化を積極的に育成すべきだ」とした上で、結婚や出産、家族に関する若者の考え方について「指導を強化する必要がある」と演説した。言い換えれば、正しい結果を得るために国民を導くことで、正しい結果を得ようとしているのだ。つまり、こういうことだ。「国民の皆さん、私たちには鉄鋼が必要だ。さあ、増産しよう」
常に忠誠を求める一党独裁制の指導者が、党の指示によって結果を変えられると考えるのは無理もない。現代の中国には、これが真実である部分が確かに存在する。だが、社会の別の部分では、これが真実にはならないこともある。私の推測では、人間の最も繊細で個人的な部分に関しては、政府の指示はあまり役に立たないことが多い。