ハーバード大学やマサチューセッツ工科大の名を知る人は少なくないだろう。だが、ウィリアムズ・カレッジやスワスモア・カレッジはどうだろうか?日本でも注目が高まるアメリカの大学には無名の名門校がまだ多数ある。なかでも、「リベラルアーツカレッジ」の存在はあまり知られていない。彼の国のエリートが目指す最高学府の秘密とは。
グローバル化が進み、高度に専門化する社会にあって、「世界の共通語」である英語や、高等教育の重要性が高まっている。そうしたなか、アメリカの大学の存在感は増すばかりだ。
近年は、幅広い教養科目を学べるという主旨で「リベラルアーツカレッジ」もメディ
アに登場するようになってきた。(中略)
アメリカの大学の特徴のひとつに、「専攻」を比較的自由に変えられることがある。これは大学カリキュラムが、リベラルアーツ教育の流れを汲むことと無関係ではない。専門科目との割合で考えたとき、コアカリキュラム(必修科目)が多いため、途中で専攻を変えても新たに学ばなくてはならない専門科目が少なくてすむのだ。(中略)
大学上位校の多くでは、出願時の専攻を入学後に変える学生の比率が6割以上ともいわれている。特に、リベラルアーツカレッジでその傾向が顕著に見られる。その理由として「在籍人数」が挙げられる。一般的に、リベラルアーツカレッジは学生の総数がおおよそ1,000~2,000と、総合大学と比べて少なめだ。当然、1学年当たりの人数も少ない。だから、一般教養科目も少人数で受講することができる。加えて、大学院を併設していることがあまりないため、教授の役割も学部生教育を前提にしている。物理の講義を著名な教授が担当するということも十分にあり得るのだ。
「必修科目で思いもよらぬ素晴らしい教授に出会うこともあります。そこで、学生が専攻を変えるのです。小規模で講義が行われるリベラルアーツカレッジの学生のほうが、専攻を変更する傾向が高いのにはそうした理由があります」と、前出の松永は語る。(中略)
その点、総合大学はどうしても専門教育の場である大学院に予算を割くケースが多くなる。高名な教授も学部生教育よりも自分の研究に専念できる大学院に集まりがちだ。(中略)
また松永は、「アメリカでは、リベラルアーツカレッジの卒業生は、知名度の高い総合大学出身者と遜色ない『発信力』を持っています」と語る。
事実、アメリカのエリートには、リベラルアーツカレッジ出身者が多数いる。ヒラリー・クリントン前国務省長官もウェルズリー大学を卒業してイェール・ロースクールへ進学している。世界的半導体メーカー「インテル」の共同創業者である故ロバート・ノイスもグリネル・カレッジを経てMITへ進んでいる。
いまのアメリカは高学歴社会ということもあり、学部卒の肩書きだけでは職に就きにくい。
リベラルアーツカレッジから総合大学の大学院へ進学するのも、ひとつのキャリアとして定着しつつある。(以下略、)