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2024.02.29 11:00

感染症と闘い続けるGHIT Fundが、ヤマハ発動機の低中所得国ビジネスに共鳴する理由

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日本発の国際的な官民ファンドである公益社団法人グローバルヘルス技術振興基金(GHIT Fund。以下、GHIT)のCEO 國井 修と世界を舞台に活躍する企業のリーダーが、対話を通じてグローバルヘルスの課題解決や日本が担うべき役割を紐解く本連載。

第2回目のゲストは、1960年代からアジア・アフリカなどの低中所得国でビジネスを展開し、現地の人々の暮らしを支えてきたヤマハ発動機より、海外市場開拓事業部 事業部長の今井久美子。今後のグローバルヘルスのあるべき姿、そして低中所得国に支援を根付かせるために必要なことを議論する。


事業として低中所得国を支援することの重要性

國井修(以下、國井):ヤマハ発動機さんは長年にわたりBOPビジネスをされていますが、実は私自身もずっとお世話になっていました。

まずUNICEFに在籍していた当時、山の奥深くにある集落や船で3日ほどかかるイラワディ川のデルタ地帯などで暮らすミャンマーの子どもたちにワクチンを届けるために、YAMAHAのバイクや船外機を購入し、活用させていただきました。

その後のグローバルファンド(世界エイズ・結核・マラリア対策基金)時代にも、車が入れない地域やバイクで配布した方が効率のよい場所には、YAMAHAのバイクを使ってマラリアに苦しむ人々にベッドネットを送り届けました。

今井久美子(以下、今井):ありがとうございます。弊社は創立のわずか3年後、1958年に海外に進出。以来、アジアやアフリカなどの新興国での漁業支援をはじめ、グローバルヘルスの観点では、弊社のバイクや船を国際団体や政府などにご購入いただくかたちでラストワンマイルにも貢献させていただいております。

ただ最初に申し上げておきたいのは、弊社はCSR型の支援も行っておりますが、製品の販売やサービスを通じて、皆様の生活を豊かにするビジネスであるということが大前提となります。

とはいえ、アフリカなどに訪問した際、弊社の製品を使っていただくことで生活が成り立ち、笑顔を見せてくださる現地の方々を目にすると、とてもうれしく、仕事をするうえでの大きな原動力になっています。

國井:持続可能な支援を行うためにビジネスを成立させることは、とても重要なことです。

我々GHITは、日本の外務省や厚生労働省をはじめ、国内外の大手製薬会社、ビル&メリンダ・ゲイツ財団、ウェルカム、国連開発計画(UNDP)などが参画している官民ファンドです。我々は資金を調達し、感染症に効果がある新薬を開発し低中所得国に届けるという使命を担っていますが、新薬開発は大変長い道のりです。

感染症は世界に多く存在し、結核で130万人以上、マラリアで60万人以上の方が亡くなっています。ところがこれらに効果的なワクチンがない。診断や薬もいま存在するものだけでは足りない。その理由はいうまでもありませんが、開発に膨大な資金と時間がかかること。開発費に500億円を投資し、10年の研究期間をかけても成功しないこともある。そのため、大手製薬会社は取り組みたくても二の足を踏みます。

そこで我々のような官民パートナーシップが促進役、また橋渡し役となり、製薬会社、大学、研究機関が国境を超えて協業することで、新薬、ワクチン、診断薬の研究開発を推進し、GHITはオープンイノベーションを促す触媒のような機能を担っています。このようなサステナブルな創薬研究の環境、エコシステムをつくることが重要だと思っています。

安全な水が感染症予防の特効薬に

國井:御社のBOPビジネスでとても興味深いのが、低中所得国の村落向け浄水装置「ヤマハクリーンウォーターシステム」です。どういった経緯で取り組むようになったのでしょうか。

今井:「バイクや船外機をつくる会社がなぜ水?」と不思議に思われたでしょう。もともとはインドネシアに弊社のバイク工場を設立したことに関係しています。日本人の駐在員やそのご家族から「水道水が茶色く濁っており、安全な水を飲むことができない」という相談を受け、家庭用浄水機の開発に着手したことが始まりです。

その後、工場で働く現地の方々や、安全な水へのアクセスが困難な住民が村落地域を中心に生活している実態を知り、村落部の河川や湖沼の表流水を浄化させて供給するシステムを開発しました。それが緩速ろ過方式をベースにした浄水装置「ヤマハクリーンウォーターシステム」です。

最大の特徴は、地元住民によるメンテナンスが可能で、長く利用できることにあります。薬剤やろ過膜を使う浄水装置は定期的なメンテナンスや部品の交換が必要になります。対して、弊社の製品は砂や砂利など自然の水浄化の仕組みを応用したシンプルな構造なので、メンテナンスはタンク内の砂や砂利を洗浄するだけとなり、ランニングコストもかかりません。

2000年にインドネシアで始まったこの取り組みは、2010年よりビジネス化し、ベトナム、カンボジア、そして現在ではセネガルやマダガスカル、ベナンといったアフリカ各国にも広がっています。

ヤマハ発動機 海外市場開拓事業部 事業部長 今井久美子

ヤマハ発動機 海外市場開拓事業部 事業部長 今井久美子


國井:私は医師でもあり公衆衛生が専門ですが、感染症対策にとって水は本当に重要です。子どもたちの命を救うのは、ワクチンもさることながら、毎日飲む水をいかに安全なものにするかで大きく変わってきます。UNICEFでは保健・栄養とともに水衛生事業が「子どもの生存プログラム」の重要な柱で、私はソマリアでそれを統括しました。

水を介して感染する病気もたくさんあります。例えば、水に浸かった足の皮膚から寄生虫が入り込んで、体内で成長して卵をたくさん産み、消化管や膀胱、女性器などに障害を与える住血吸虫症という熱帯病があります。アフリカのある国の村では、子どもの90%がこの病気に感染していながら子ども用の治療薬はなく、まさに顧みられない病気の典型です。

また、安全な水で手洗いをすることは下痢や食中毒予防だけでなく、肺炎の感染や死亡の低減にも効果的です。ある研究によるとこれらの病気にかかる確率が半分以下に下がるといったデータもあります。だからこそ、安全な水はとても大切なのです。

今井:アフリカの低中所得国では、せっかく安全な水を手にしても、家のすぐそばに流れる川の水を使ってしまうケースもあります。こうした行動を日常化させないために、弊社ではアフターケアとして、地元のNGOなどと協力して水の重要性を啓発する活動も行っています。

例えば、今ケニアで取り組んでいるのが、子どもたちを対象としたラグビー教室です。ラグビーチームを保有している弊社のアセットを活かし、引退した選手を派遣して、子どもたちにスポーツの楽しさを伝えています。「スポーツで汗を流した後に、きれいな水を飲む」という習慣をつけることで、清潔な水がもたらす健康効果を実感してもらい、大人はもちろん、次の世代にもよい影響を与えてくれればというのが狙いです。

國井:子どもたちの習慣にするという考え方はとても大切ですね。

ソマリアの乾燥地帯では、ひどい時は3日間もかけて水を汲みに行くこともあります。その仕事は母親や少女の役目で、道中には性暴力を含めてさまざまな危険があります。村に水があればリスクを回避できますし、水を汲みに行く時間を教育やほかの生産的な活動に充てることもできる。子どもや女性への啓発活動やエンパワメント(能力構築)は、多くの問題を解決する手立てとなります。

感染症においても同様のことが言えます。貧困と劣悪な衛生環境のなかで感染症に罹患してしまう。結核やマラリア、顧みられない熱帯病といった感染症にかかることで、就学・就労が困難になり、社会活動や経済活動が制限され、貧困から脱却できないという悪循環を生み出します。だからこそ、GHITの活動は新薬によって感染症の治療・予防を促進し、現地の人々の健康や生活の改善、生産性の向上、貧困からの脱却という好循環を生み出すことに結びつくと信じています。

ともに国際協力に取り組むパートナーを見つけるには

今井:「水が変われば、暮らしが変わる」をスローガンに、「ヤマハクリーンウォーターシステム」の普及に努めていますが、今後はアウトプットだけでなく、アウトカム・インパクトも重視していかなければいけないと考え、「インパクト加重会計」を実施しました。

弊社が「グローバルヘルスを応援するビジネスリーダー有志の会」に参画させていただいている縁で、同会のご協力のもと、インパクト加重を数値的・科学的に計算し、評価しようという取り組みを行いました。

結果、「ヤマハクリーンウォーターシステム」を設置している11か国において、受益者は約3万9,000人にも及び、水汲み労働の時間、下痢などで仕事ができない時間が削減されたことで、1人あたり年間収入が5~8%改善できることがわかりました。

このインパクトを最大化するために、さらに企業努力に努め、実際に製品を購入・管理いただく現地のNGOとさらなる連携を図って、より一層拡大させていくことが弊社の使命だと思っています。

國井:「健康」はすべての人の礎であり、社会の生産性向上においても健康が源です。創薬や直接の医療サービス提供でなくとも、ヤマハ発動機さんのようにグローバルヘルスに多大な貢献ができる領域は多くあります。

日本は「すべての人が生涯を通じて必要な時に必要な保健サービスを負担可能な費用で受けられる」というユニバーサル・ヘルス・カバレッジの概念が浸透し、それを実践している国です。世界に向けてもその重要性を発信していますが、まだまだそれを達成するには程遠い国が少なくありません。多くの企業が世界の現状に目を向けて、健康・保健分野で私たちと一緒に活動してくれることを期待しています。

GHITも御社も今後さらにインパクトを大きくするためには、パートナーシップがカギになるでしょう。GHITと御社との掛け合わせでどのようなシナジーを創出できるか、今後、検討してみたいです。

加えて、近年はグローバルサウスとのパートナーシップも重要になっています。例えばアフリカから日本に留学している人のなかに信頼できる優秀な人もいる。日本の文化や強みを理解していて、自国の未来づくりについても真剣に考えている人材がいれば、うまくつながることができるのではないでしょうか。

今井:そのとおりですね。今アフリカのスタートアップのなかにも、自国のために真剣に事業に取り組んでいる企業が多くあります。

弊社のケニアにある駐在事務所では、運転手だったケニア人スタッフが「ヤマハクリーンウォーターシステムを導入すると、自分たちの暮らしがこんなに改善できるのか」と興味を抱き、今は啓発活動などの仕事にも取り組んでくれています。その熱意とパワーは、我々の活動を大きく成長させてくれるだろうと期待しています。

GHIT Fund CEO 國井 修

GHIT Fund CEO 國井 修


國井:そのような夢や情熱を持った人々を見つけて、信頼関係を構築して一緒に夢に向かって行動していくことが、グローバルな取り組みにおいてはとても大事なことですね。そのためにはNGOや市民社会の方々はとても大切な存在で、積極的に協働していくとよいのですが、ビジネスの世界、野心を持って起業する現地の若者たちにも大いに期待しています。

貧しい国を興すには慈善事業や無償資金協力だけではなく、「お金持ちになりたい」という人々のエネルギーを経済活動や人々の生活改善にいかに結びつけるかが重要だと思っています。その思いを自分だけでなく「自分の家族、地域、そして国をよくしたい」という原動力につなげるか。アフリカにもそういった若者はいますし、企業もあります。

そうした方々や組織、また我々GHITなどの団体と、ヤマハ発動機さんのような企業が手を取り合い、互いがWin-winになる国際協力の輪が広がっていけばいいなと願っています。


GHIT Fund
https://www.ghitfund.org/jp

いまい・くみこ◎ヤマハ発動機 海外市場開拓事業部 事業部長。同社入社以来、事業管理・企画業務を担当する。2018年より、新興国の開拓・マーケティング専任部門である海外市場開拓事業部の企画推進部長を務めた後、2022年8月から現職。2023年4月からは、ジャパンラグビーリーグワンの静岡ブルーレヴズと連携し、アジアやアフリカの子どもたちを対象としたラグビー教室の開催、ラグビー用品やスポーツウェアなどを寄付する社会貢献活動「Blue Ties(ブルータイズ)」にも尽力している。

くにい・おさむ◎公益社団法人グローバルヘルス技術振興基金(GHIT Fund)CEO。自治医科大学を卒業後、ハーバード公衆衛生大学院で修士取得。国立国際医療国際センター、東京大学大学院国際地域保健学専任講師、外務省経済協力局課長補佐、長崎大学熱帯医学研究所教授、国連児童基金(UNICEF)ニューヨーク本部上級アドバイザー、ミャンマー・ソマリアの保健栄養事業部長、グローバルファンド(世界エイズ・結核・マラリア対策基金)戦略・投資・効果局長などを経て2022年から現職。

Promoted by GHIT Fund | text by Tetsujiro Kawai | photographs by Daichi Saito | edited by Aya Ohtou(CRAING)