宇宙

2024.02.21 12:30

「太陽の500兆倍」宇宙で最も明るい天体を発見、120億光年先のクエーサー

安井克至

記録破りのクエーサー「J059-4351」の想像図(ESO/M. Kornmesser)

これまで宇宙で検出された中で最も明るい天体を、天文学者チームがチリにある欧州南天天文台(ESO)の超大型望遠鏡VLTを用いた観測で新たに発見した。

120億光年彼方の初期宇宙で検出されたこの天体「J0529-4351」はクエーサーで、太陽の500兆倍の明るさがある。専門誌Nature Astronomyに2月19日付で掲載された、今回の研究をまとめた論文の共同執筆者で、オーストラリア国立大学(ANU)の天文学者のクリストファー・オンケンは「それほど目立たないクエーサーがすでに約100万個も見つかっているのに、この天体が今日まで知られていないままだったのは驚きだ」と語っている。「文字どおり、これまで灯台下暗しだった」

J0529-4351は、1980年から実施されたシュミット望遠鏡による南天サーベイ観測の画像に写っていたが、クエーサーとしては明るすぎるとして40年以上、銀河系内の恒星と見られていた。

クエーサーとは

クエーサーは宇宙初期の天体で、超大質量ブラックホールがエネルギー源になっている。全天で群を抜いて明るい光源であり、宇宙で最も強力なエネルギーを放出している天体だ。J0529-4351の中心にあるブラックホールは、1日に太陽1個分の質量を増大させており、これまでで最も成長のペースが速いブラックホールとなっている。

最近の研究で、クエーサーは銀河同士の衝突の結果として生じることが明らかになった。

ブラックホール

J0529-4351は、地球からはるか遠方にあるため、その光が地球に届くのに120億年以上かかっている。論文の筆頭執筆者で、ANUの天文学者のクリスチャン・ウォルフは「これまでに知られている最も急速に成長するブラックホールを発見した」と指摘する。「太陽の170億倍の質量を持ち、1日に太陽1個強を取り込むことで、現在知られている宇宙で最も光度の大きい天体となっている」

クエーサー「J059-4351」(中央枠内および左下の拡大画像)が位置する南天の画架(がか)座周辺の領域(ESO/Digitized Sky Survey 2/Dark Energy Survey)

クエーサー「J059-4351」(中央枠内および左下の拡大画像)が位置する南天の画架(がか)座周辺の領域(ESO/Digitized Sky Survey 2/Dark Energy Survey)

降着円盤

クエーサーから放出される途方もない光は、天文学者らが「降着円盤」と呼ぶ、ブラックホールに向かって渦を巻きながら引き寄せられている高温の、薄い円盤状の物質から発せられる。論文の共同執筆者で、ANUの博士課程学生のサミュエル・ライは「この光はすべて、直径7光年の高温の降着円盤から発せられている。これは宇宙で最大規模の降着円盤に違いない」と説明している。

米航空宇宙局(NASA)と欧州宇宙機関(ESA)は2019年、太陽の600兆倍の明るさのクエーサーを、ハッブル宇宙望遠鏡で発見したと報告した。だが、このクエーサーの明るさは「重力レンズ」銀河によって増幅されており、実際の光度に換算すると太陽の約11兆倍になる。

forbes.com 原文

翻訳=河原稔

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