英国では、すべての空港で3次元(3D)技術を搭載したスキャナーが導入される予定。実現すれば、最大100ミリリットルの容器に入れた液体を、20センチ四方の小さな透明のビニール袋に入れて検査を受けるという現行の規則が過去のものとなる。ところが英紙タイムズは、英運輸省が設定した今年6月の導入という目標を、多くの空港が達成できない見通しだと伝えた。
新世代のX線CTスキャナーは病院で使用されるものに近く、手荷物の内部をこれまでより詳細に検査できるようになるため、危険な液体を検出しやすくなる。ノートPCをはじめとする電子機器もかばんから取り出す必要がなくなり、乗客は最大2リットルの液体物を手荷物として飛行機に持ち込むことができるようになる。
ロンドンのヒースロー空港では2017年から試験が実施され、英政府は2022年、この計画にお墨付きを与えた。同国では、ロンドンのシティ空港とイングランド北部のティーサイド空港がすでに3Dスキャナーを導入しており、隣国アイルランドのシャノン空港とドニゴール空港も同様だ。英政府は国内のすべての空港に対し、今年中に導入するよう求めている。これにはアバディーン、バーミンガム、イーストミッドランド、エジンバラ、ロンドン・ガトウィック、グラスゴー、ロンドン・ヒースロー、リバプール、ロンドン・ルートン、マンチェスター、サウサンプトン、サウスエンド、ロンドン・スタンステッドの各空港が含まれる。
タイムズは複数の関係筋から得た情報をもとに、ヒースロー、ガトウィック、スタンステッド、マンチェスターの各空港を含む、複数の空港で新機材の設置作業が遅れていると報じた。ガトウィック空港は、来年第1四半期までに3Dスキャナーを導入する意向だと説明。他の空港では、新機材が稼働しているのは保安レーンの一部にとどまっているという。ヒースロー空港では、3Dスキャナーを設置する前にターミナルの床の一部を補強する必要があるため、新機材が稼働するのは来年にずれ込む見通しだ。
英紙テレグラフによると、多くの業界関係者は、2Dと3Dのスキャナーが混在する空港での混乱を避けるため、また、保安検査職員の再教育に十分な時間を割くため、規則の変更は今年秋以降になるのではないかとみている。
英警察は2006年、清涼飲料水のペットボトルに液体爆発物を隠して複数の大西洋横断便を墜落させようとしたテロ計画を阻止。同年、現行の100ミリリットル規則が導入されたが、過剰反応ではないかとの批判もある。その後、乳児用ミルク以外のすべての液体の機内への持ち込みが禁止された。
英国で3Dスキャナーを使用している空港から出発する乗客であっても、乗り継ぎの他の空港でも同じ技術が導入されているかを確認しなくてはならない。オランダ・アムステルダムのスキポール空港や米マイアミ国際空港、イタリア・ローマのレオナルド・ダビンチ国際空港などは、すでに3D技術を導入している。だが、現時点では、欧州の多くの空港で新技術の導入が進んでいない。
(forbes.com 原文)