ロボティクス
ロボティクスにおける日本のリーダーシップは疑いようがありません。日本はロボティクスや自動化の分野で先駆的に技術発展に貢献してきた歴史があることから、同分野でスタートアップが成功するのに必要な環境が十分に整っています。ファナックや安川電機のようなリーディングカンパニーが国内にあり、日本だけで産業用ロボットの世界供給の約45%を占めるなど、同分野における日本の優位性は明らかです。
また、高齢化社会により自動化がますます求められる中、その解決に向けてロボティクスを活かした新たなイノベーションが生み出される可能性も高いでしょう。
文化的にも、日本は他国と比べて「人間とロボットが一緒に働く」という概念が社会的に受け入れられやすいのではないでしょうか。アメリカではロボットというと「ターミネーター」のようなディストピア的なものがイメージされやすいですが、日本人は「ドラえもん」のおかげで親しみを持たれる傾向があります。
航空宇宙とその先へ
日本は世界の航空宇宙産業において重要なポジションにあることから、航空宇宙セクターにもスタートアップにとって数多くの機会が存在します。例えば、ボーイング社の航空機に使われる部品の約40%を日本のメーカーが供給していますが、これも日本がこの分野において高度な製造能力や技術力を有している証拠です。
また、日本は宇宙産業においても世界的に最も重要な国の1つです。そして今後も国としてその影響力を維持し続ける方針であることが、昨年の11月にJAXAに1兆円の基金を設けることが閣議決定されたことからもわかります。
さらに世界の宇宙産業は今、「AWS革命」に似た転換期を迎えようとしています。Amazon Web Services (AWS)などがサーバーコストを大幅に下げ、ソフトウェアやインターネットの分野に新たな時代をもたらしたように、SpaceXが宇宙産業にも変革を起こそうとしているのです。
日本の航空宇宙関連の専門的知識や技術力は、日本生まれのスタートアップがこの変革の波に乗り、地上と宇宙の両方で技術的イノベーションを創出するための強固な基盤となるでしょう。
バイオテクノロジー
日本のバイオテクノロジーにおける技術力は世界的に有名であり、政府が「世界最先端のバイオエコノミー社会を実現すること」を目標に積極的に推し進めているバイオ戦略にも支えられています。このバイオ戦略はバイオ医薬や再生医療、細胞治療、遺伝子治療などの分野を対象とし、2030年までに市場規模を総額92兆円にまで成長させることを目指しています。
さらに、経済産業省(METI)もバイオエコシステムの育成に向けて3500億円を投資し、「創薬ベンチャーエコシステム強化事業」など様々なイニシアチブを立ち上げています。
バイオテクノロジーにおいてグローバルリーダーであり続けることが国の重要な戦略として位置付けられていることがわかります。
これらの強力な枠組みに加え、日本には武田薬品やアステラス製薬などの巨大製薬会社を筆頭とした高度な技術力を有する製薬産業が確立されていて、バイオテクノロジーのスタートアップが世界規模で医療イノベーションをリードするための強固な基盤が整っています。